京都の境内で喫煙!?日本での「NG行為」が外国人に伝わらないワケ

居住国で「普通にOK」がダメなとき
雨宮 紫苑 プロフィール

「なぜできないか」「何ならできるか」

『自分にとって当然のことを期待する外国人観光客』と『現地のルールを当然守ってくれると思っている受け入れ側』という対立は、どこでも起こる。

観光客を受け入れる側は心のどこかに、「興味をもって来ているのだから理解してくれるはず」と期待しているだろう。日本の価値観が当たり前すぎて、説明の必要性に気づいていないのかもしれない。

しかし観光客の多くは、自分にとって当然の行動をし、自分の望むように旅行を楽しみたいと思っている。だから、認識に隔たりが生まれるのだ。

重ねて書くが、「だから外国人はダメ」という話ではない。わたしは、「だから外国人に伝えよう」といいたいのだ。

 

前述した天龍寺のように、日本のルールを伝えるために努力している人もたくさんいる。京都市では、外国人観光客も過料の対象となるため、「どうやって外国の人たちに喫煙ルールを周知させるか」を課題にしているそうだ。

京都市文化市民局くらし安全推進部くらし安全推進課では、外国人喫煙者に喫煙所や禁煙ルールを伝えるため、フリーペーパーに広告を掲載したり、英語、中国語(漢体・繁体)、韓国語をはじめとした13ヵ国語でのチラシを作成している。民間業者が海外観光客向けに作っているトラベルガイドに「市内全域で基本的に路上喫煙禁止である」と告知してもらうようにお願いもしているらしい。

電車のルールに関しては、JR西日本のサイトでは、英語、中国語(簡体・繁体)、韓国語に対応しており、自転車は折りたためるものでなければ乗せられないこと、盲導犬は問題ないがそれ以外はケージに入れることなどが明記されている。

ドイツをはじめとしたヨーロッパでは、こういうふうに電車に自転車を乗せるのが「普通」という Photo by iStock

このように、外国人観光客を積極的に呼び込むのであれば、「日本でできること」とともに、「日本でできないこと」を伝えて行くことも大切だ。そうでなければ、観光客は「期待とちがった」「罰金を払わされた」と日本旅行を楽しめなくなってしまうし、受け入れる側も「これだから外国人は」とネガティブな印象をもってしまう。

とはいえ、ルールの周知のためには『網羅的』であることが重要なポイントである。東京観光の際はJR東日本、関西観光の際はJR東海やJR西日本のサイトを辛抱強く探してチェックする人は、残念ながら多くはないだろう。ドイツ観光の際、ヘッセン州とベルリン州でそれぞれ喫煙ルールを調べる人がどれだけいるかと考えれば、想像しやすいはずだ。

だからこそ日本のルールをわかりやすく、多言語で、「電車」「喫煙」などの項目にわけて網羅的に伝えるサイトを作り、いろんな雑誌やメディアでそこにアクセスをうながすようにするのはどうだろう。そのサイトのSEOをあげて、検索すると上位に出てくるようにすれば、「検索してもどこを調べたらいいかわからない」とはならないのではないだろうか。だって、東京の電車だとJR東日本で、関西は違うなんて、外国人にはわかりにくいだろうし。

さらに、「お互い快適に過ごすための心配り」というスタンスで、代替策の提案とNGルールの理由説明をセットにするといいんじゃないだろうか

たとえば、「No Smoking」と書くだけでなく「喫煙所はここだよ」と案内するとか(現在地から一番近い喫煙所がわかるアプリや喫煙所マップもあるといいだろう)、禁止事項を並べるだけでなく、レンタサイクルやケージ貸し出しサービスも紹介するとか(鉄道系サイトも深く検索してくとレンタサイクル情報が出てきたりする)。

「新幹線切符の払い戻し方法」や「パスポートをなくしたときの対処法」、「各地オフィシャル観光サイト一覧」「温泉の入り方」「浴衣の着方」などもあれば、さらにいい。宿泊業界や飲食店で働いている人にとっても、「このサイトがありますよ」と案内できる。わたしが観光客なら、こういうサイトはありがたい。

こちらは日本政府観光局のトラベルガイドサイト。行くべき場所、やるべきことなどが美しい写真と共に紹介され、スクロールしていくと「日本の法律」というコラムにたどり着く。ここを読んでいくと基本的に歩きたばこは禁止だとは書いてある。それでも喫煙している人が多いのが現実。やはり東京五輪に向けて「NGルール」を分かりやすく伝える方法は考えたほうがいいと思う 「JNTO ホームページ」より

そして「なぜそういうルールなのか」、たとえば「日本の電車は混むし改札もあるから自転車は危ないんだよ」「お寺の修行体験ではこういう考えのもと行っている」ということまでしっかり伝えることができたなら、それはたんなる『観光』ではなく、『文化交流』として大きな意味をもつのではないだろうか。