累計190万部突破、隠れたベストセラー『5分後シリーズ』の秘密

担当者に聞く「子どもの心を掴む方法」

2013年12月から学研が刊行する『5分後に意外な結末』シリーズをご存知だろうか。初版4500部からスタートしたにもかかわらず、いまや累計190万部を突破し、子どもたちの間で絶大な支持を獲得している、隠れた大ヒットコンテンツだ。

全国の小中学校で行われる「朝の読者運動」の2018年ランキングでは中学校部門1位、小学校部門13位。ポプラ社発表の「小学生がえらぶ!“こどもの本”総選挙」では小5、小6のランキングトップ10に2冊ずつ入り、シリーズごとのランキングでは7位。

さらに、毎日新聞社が行う「学校読書調査」では2017年5月の「1ヵ月の間に読んだ本」ランキングで『5分後に意外な結末①赤い悪夢』が小6女子の10位、中1男子の5位、女子の5位にランクインしている(『読書世論調査2018年度』)。

その中身は、日本や世界の古典や小話、都市伝説を翻案したり、新作を書き下ろしたショートショートのアンソロジー(または連作短編集)だ。「短編集」「アンソロジー」はなかなか売れないという出版業界の常識を打ち破り、なぜこのシリーズは小中学生に圧倒的に支持されているのか? そのツボの突き方を担当編集者である目黒哲也氏(学研プラス コンテンツ戦略室エグゼクティブ・プロデューサー)に訊いた。

 

「男子向けの本がない」が始まりだった

――本シリーズは、公式サイトはあるもののSNSアカウントもなく、ネットで検索してもほとんど本の情報が出てきません。このネット全盛時代において「ネットの力に頼らないヒット作」として、むしろ非常に注目すべきシリーズだと思います。立ち上げの経緯から教えてください。

目黒 もともとは「小学校高学年から中学生くらいまでの男子をターゲットにした本」がほとんどなかったので、そこに向けた本を作りたかったんです。

児童書の世界では、小学校中学年以上の男子は「空白地帯」、女子も小学校高学年以上は「児童書コーナーでは本を買わない」と考えられていました。書店さんでも小学校高学年〜中学生向けの本は「児童書コーナー」にはあまり置いていません。難しい年齢層なんですよね。

最近は変わってきましたけれども、少し前まではいわゆるYA、ヤングアダルトと呼ばれている若年層向けの小説も、翻訳小説や、国内ものは「児童文学者が書いている作品」のような、ちょっと固い本が多いと感じていました。

ただ本は、値段やタイトル、装丁が少し違うだけで売れたりもしますから、一度自分でやって「本当なのか?」を確かめてみたかったんです。

「ある程度の年齢になると、一般文庫やラノベの棚に行くから、児童書の棚にある小説は読まないんだ」と言う声も社内にありました。ただ、必ずしもみんながそういう方向に行くわけではないと思うんですよね。

――近年ではラノベは20代、30代の読者の方を向いていますしね。

目黒 だから自分としては、「児童文学ほど堅いイメージではなく、また、一般成人向けよりは読みやすい」というあたりを意識して企画したんです。

結果としては、中学生の方が先に火が付いて、徐々に小学生も読むようになってきている、という感じです。ただ、「小学校高学年〜中学生の男子」向けに作ったつもりが、実際には女子の割合の方が圧倒的に多いようなので、そこは読みが外れました(笑)。もちろん男子もかなりの数いるのですが。

小中学生の心をつかむための「普遍性」と「時代性」

――具体的に、小学校中学年から中学生までに刺さるように工夫された点がさまざまあると思いますので、そこを教えてください。まずこの「5分後」+「意外な結末」というタイトルの由来は?

目黒 意識したのは、小中学校では一般的になっている「朝の読書」運動です。

――朝の10分間、生徒が自分で好きな本を読む時間を設ける、というものですね。

目黒 はい。朝読で読まれる本にしたい、ただ10分も集中力って続かないよな、と思ってその半分で「5分」にしました。