photo by iStock
# ベンチャー # 東大

東大発ベンチャーの「成功の秘訣」! キーマンが語った

各務東大教授を独占インタビュー
日本の大学発ベンチャーでもっとも成功しているのが東京大学である。ベンチャー企業が次々に誕生しているのだ。その背景にはいったい何があるのだろうか。
ベンチャー企業が生まれ、育つには、起業家がいて、投資家やメンター(指導者や助言者)、公認会計士、ベンチャー・キャピタル、さらにはM&Aを手掛ける企業など、さまざまな立場の専門家や組織が集まる仕組みが整っていなければならない。
いわば、植物の生態系のような一種のエコシステム(循環)が築かれている必要がある。有望なベンチャー企業が相次いで生まれている東大で、この「ベンチャー・エコシステム」の形成に15年近くにわたって携わってきたのが、ベンチャー支援と企業連携を推進する東京大学産学協創推進本部イノベーション推進部長の各務茂夫教授(ボストン・コンサルティング出身)である。各務教授がそのすべてを語った。

ベンチャー支援のプロ集団から始まった

東大発ベンチャーとしての取り組みがはじまったきっかけは、2004年4月の国立大学の法人化です。法人化にあわせて次々に施策を打ち出しました。

まず、大学発ベンチャーを支援する実務組織として産学連携本部(現在の産学協創推進本部)を設置し、民間からコンサルティング経験者など、ベンチャー支援のためのプロフェッショナルを集めました。

また、技術移転機関の「東京大学TLO」を東大の100%子会社にしました。この会社は、大学の研究者の研究成果を特許化し、それを企業へ橋渡しする、つまり技術を移転する法人で、産と学の仲介役を果たす組織です。

 

東大では、年間500~600件の発明届があります。この発明を元に大学発の新規産業を生み出し、それにより得られた収益の一部を研究者に戻すことによって、新たな研究資金を投入できます。その結果、大学での研究のさらなる活性化をもたらす原動力にもなるのです。東大TLOは、産学連携の中核をなす組織です。

そして、国立大学法人化と同時に、東大独自のベンチャー・キャピタル・ファンドを運営する会社として「東京大学エッジキャピタル(UTEC)」を設立しました。

当時、大学の子会社はTLOの1社しか認められていなかったので、UTECは厳密にいえば、東大の100%子会社のベンチャー・キャピタルではありません。東大と密接な関係にあるベンチャー・キャピタルという位置付けです。

駒場キャンパス内で語る各務教授

UTECの第1号ファンドには、民間企業から83億円の資金が集まりました。同様に、第2号ファンドには72億円、第3号ファンドに146億円、そして、2018年の第4号ファンドに243億円と、トータル545億円近いファンドを組成することができました。もちろん、東大発ベンチャーならば、自動的に投資するというわけではなく、投資するに当たっては個別にUTECのプロが評価を行います。

また、国は大学発ベンチャー支援のために合計1000億円の出資事業(特定研究成果活用支援事業)を行うことを決定し、東大のほかに京都大学、大阪大学、東北大学の4校に資金を振り分けました。

東大は417億円をお預かりし、2016年1月に「東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)」を設立し、その後250億円の第1号ファンドを用意しました。

このファンドはUTECとは異なる性格を持っています。UTECがベンチャー・キャピタルとして、ベンチャー企業に直接出資するのに対して、東大IPCは、東大発ベンチャーを支援する民間のベンチャー・キャピタルに対するLP出資(リミテッド・パートナー/東大IPCはファンド・オブ・ファンズ形式で投資ファンドへ出資)の手法を取っています。