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米国が本気で進める、米中新冷戦「新マーシャル・プラン」の全貌

北方領土問題とも無関係ではない

米ソ冷戦下の「援助計画」に酷似

米国の「中国包囲網」作りが急ピッチで進んでいる。トランプ政権はインド太平洋諸国の社会基盤(インフラ)整備に、最大600億ドル(約6兆8000億円)の支援を決めた。米ソ冷戦下の欧州復興計画(マーシャル・プラン)を思い起こさせる。

支援計画は、来日したペンス副大統領と安倍晋三首相との会談後の記者会見で発表された。会談では、日本が100億ドルを上乗せすることで合意し、支援総額は最大700億ドル(約7兆9000億円)になる。各国の発電所や道路、橋、港湾、トンネルなどの整備に低利融資する。

 

これはもちろん、中国の経済圏構想「一帯一路」を念頭に置いている。中国は各国のインフラ整備に巨額融資する一方、相手国の返済が苦しくなると、借金のかたに事実上、取り上げてしまうような政策を展開してきた。スリランカのハンバントタ港が典型だ。

ペンス氏はこれを「借金漬け外交」と呼んで、批判してきた。今回の支援計画には、そんな中国による囲い込みをけん制する狙いがある。「自由で開かれたインド太平洋」というキャッチフレーズは、まさにインド太平洋が「中国の縄張り」になるのを防ぐためだ。

この計画を米国がいかに重視しているかは、なにより金額に示されている。ポンペオ国務長官は7月、インド太平洋諸国に総額1億1300万ドルの支援を表明していた(https://jp.reuters.com/article/usa-trade-indian-ocean-china-idJPKBN1KK1W4)。それが、なんと一挙に530倍に膨れ上がった。こう言っては失礼だが、ケチなトランプ政権としては「異例の大盤振る舞い」だ。

支援の枠組みも一新した。 この話をいち早く特ダネとして報じた読売新聞(11月10日付朝刊)によれば、それまで米国の海外支援は国際開発庁(USAID)と海外民間投資公社(OPIC)の二本立てだった。ところが、10月に海外支援を強化するビルド法(BUILD)を成立させ、国際開発金融公社(USIFDC)に一本化した。そのうえで、新公社に600億ドルの支援枠を設けた、という。

10月といえば、ペンス副大統領が中国との対決姿勢を鮮明にする演説をしたのが10月4日である(10月12日公開コラム、https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57929)。その後、ペンス氏の来日に合わせて、日本の協力もとりつけたうえで計画を発表した。

ペンス演説から1ヵ月という動きの速さに注目すべきだ。本当の順番は逆で、トランプ政権は水面下で支援の枠組み作りを先行させ、メドが立ったのを確認したうえで、ペンス演説を世界に発信したのかもしれない。それほど、手際の良さが際立っている。

そうとでも考えなければ、わずかな期間で支援額を530倍にするような芸当は難しい。

支援額と発表のタイミングから、私は米ソ冷戦下の欧州復興計画(マーシャル・プラン)を思い出した。1947年6月、当時のマーシャル米国務長官が戦争で荒廃した欧州の復興を目的に発表した大規模援助計画である。