不倫で「社会的に死んだ乙武君」は、空白の2年半をどう生きていたか

本人に聞いた
乙武 洋匡 プロフィール

社会的に死んでも続くよ、人生

―車椅子の主人公が「自分がいちばんの差別主義者じゃない」と言われるシーンが印象的です。

世間からレッテルを貼られることを嫌がるホストが、「医者なんて金儲けのことしか考えてない」と言うこともある。色眼鏡で見られるのを疎んじる人も、他人に対しては容易にレッテルを貼ってしまうのが現実です。

 

障害者が頑張っている姿を描く番組を観て感動する人が多いのは、障害者を「弱者」と思い込んでいる人が少なくないことの裏返し。ですが、障害者だって違う局面では加害者にもなり得る。誰しも、他人に対しては加害的になりやすいということも書いておきたかったのです。

―乙武さん自身も自分に貼られるレッテルに苦しんできたそうですね。

騒動前は「清く正しい乙武さん」像が独り歩きし、どれだけ素の自分が持つダメな部分を出しても「いやいや謙遜して」と必要以上に評価されてしまった。

反対に、騒動後は、どれだけ社会に前向きな提言をしても「ゲスなお前が言うな」と非難されてしまう。白か黒かで判断されがちですが、ダメなところも、社会を良くしたいと思うのも、どちらも私の一面です。

―あの不倫騒動について、いまはどう感じていますか。

メディアを通じて自分が目指す社会を実現しようと活動してきましたが、一方で限界も感じていました。実はそれまで一番避けていたのが政治でしたが、思い描く社会を実現していくためにはこの道しかないと思い至りました。

ところが、腹をくくった矢先にあのざまです。もっとも、すべては私自身の甘さ、思い上がりが引き起こしたことだと反省しています。

―今後はどういう活動をされる予定でしょうか。

これまでの私の作品はハッピーエンドでしたが、今作はあえて「主人公たちの今後はどうなっていくのだろう」というモヤモヤを残したんです。

小説の世界では作者が都合の良いところで物語にピリオドを打ちますが、本来はカンマであり、登場人物の人生はその後も続いていきます。

私自身も、社会的な死を迎えたことは自分が一番よくわかっているつもりです。しかし、それでも私の人生は今後も続いていく。周囲は「あいつは終わった」と言いますが、そんな簡単に終われないんですよ。

とにかくいま私にできることは与えていただいたことに丁寧に取り組んでいくこと。その積み重ねだけです。(取材・文/齋藤剛)

『週刊現代』2018年11月24日号より