ひとえに「ゲノム編集」と言っても、使いみちや対象とする生物種、そして具体的にはSDN-1、2、3のどれを行うのか、という操作内容によっても、社会的な受け止め方が変わる可能性があります。
現在、日本でも法整備に向けた動きが急務となっています。
遺伝子組み換え技術を規制する法律である「カルタヘナ法」と照らし合せて、ゲノム編集による品種改良をどう扱うべきか、環境省は2018年7月に検討を開始し、8月には「ゲノム編集技術の利用により得られた生物のカルタヘナ法上の整理及び取扱方針について(案)」が公表されました。
(カルタヘナ法:遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律)
この案では、細胞外で加工した核酸が含まれる場合(SDN-2およびSDN-3など)は、得られた生物は「遺伝子組換え生物等」に該当するとしています。
一方で、得られた生物に細胞外で加工した核酸が含まれない場合(SDN-1など)は、「遺伝子組換え生物等」には該当せず、「ゲノム編集後に生物に移入した核酸またはその複製物が残存していない場合」もカルタヘナ法の対象外としています。
さらに、カルタヘナ法の対象外とされた生物の使用についても言及されており、その生物の特徴と生物多様性への影響に関する情報提供を求めた上で「取り扱うこととする」としています。
2019年3月には、方針案に対するパブリックコメントの結果を踏まえた正式な指針が示される予定ですが、この流れで行けば、少なくともSDN-1カテゴリーにおいては、国内の大学、研究機関、種苗会社においてゲノム編集による品種改良が実施できるようになる見込みです。
そして食品としての安全性、ルールづくりについては、厚生労働省で9月から調査・検討がようやく開始されました。
日本の食卓に(そしてハヤシライスのルーに)ゲノム編集野菜が溶け込める日が来るのか。数年後には、その答えが見えてくるかもしれません。
人類は長い歴史のなかで、食用に適した形を求めて動植物を変えてきました。その結果、より美味しく食べやすいもの、育てやすいものが生み出されてきました。
そして食のニーズの多様化とともに、育種のニーズも多様化しています。また、水不足や温暖化など、農業環境が厳しさを増す中で、食料生産をより効率的にする必要も生じています。
この先、私たち人類が生きていくために、家畜や作物をどこまで改良していく必要があるのか、見極めていく必要がありそうです。
※実際に「ゲノム編集イネ」を栽培している現場を訪ねる続編はこちら。