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母子家庭で育ち、ハーバード大を卒業した芸人の「貧困時代の楽しみ」

パックンの人生最高の10冊

目指すべき方向はこれだ

母子家庭で貧しく、テレビも満足に観られなかった僕にとって、エンターテインメントは読書だけでした。

日曜のミサで読む聖書や家にあったギリシャやローマの神話の本、母が持っていた児童向け探偵小説、「クリケット」という子ども向け雑誌などを、何度も何度も読みました。

 

図書館ではジャック・ロンドンなどの動物もの、『ナルニア国物語』や『指輪物語』などのファンタジー、続いてヴォネガットやアシモフなどのSFなども借り、とにかくたくさん読みましたね。だから本の話は永遠にできますよ。ハーバード大学に合格できたのも、同世代に比べ圧倒的に読書していたからでしょうね。

今回挙げた10冊は、日本語訳を手に入れやすいものに絞りました。

1位のビル・ブライソンの『人類が知っていることすべての短い歴史』は、超面白い科学読み物。時間があったら月1回は読み返したいぐらい、大好きな一冊です。

ビッグバンの瞬間から、われわれ人類が生きる今に至るまで、137億年にわたる宇宙史を、多くの科学者たちの実績などに触れながら紐解きます。

読者をぐっと引き込む、彼の語り口が素晴らしい。自然や人間のすごさに、筆者自身が常に感動しているんですね。

新星の爆発を肉眼で発見する牧師の話、研究のために自分の目に針を刺したニュートンの変態ぶりなど! ドライになりがちな科学の話を、ユニークなエピソードを交えながら、とてもわかりやすく伝えています。

ニュートンが描かれたドイツの切手(Photo by iStock)

もともと旅行記などで知られる作家ですが、『英語のすべて』など他の本もすごく面白い。ビル・ブライソンの書き方は、僕の芸風や大学での教え方に、目指すべき方向性を示してくれました。

2位のジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』も考え方に大きな影響を与えてくれた本です。

進化生物学や言語学など最新の学問の知見を生かして、人類史の真の姿を明らかにしていこうとする内容ですが、これがまさに目からうろこ。

欧米諸国が世界をリードする位置にあったのは、完全に偶然の産物でしかなかったという事実が突きつけられます。たとえばある国が貧しく、弱い立場にあるのは、その地域には自然に栄養源となるような作物がなかったり、馬がいなかったりなど、些細なようでいて決定的な、地理的背景がいくつもあること。

また、隔離されていて交易がないと異文化とのアイデアの交換がなく切磋琢磨されないこと、人同士の交流がなく細菌への免疫が鍛えられないことなど、発展を妨げる要因が存在することが説かれています。

人間の才能や努力の問題ではなく、自然環境的な条件が極めて重要。このことを学び、僕は謙虚になれた気がします。