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玉子と卵、どう違う?

動物のつく名字にまつわるルーツも、番組では紹介している。前出の国見氏はこう語る。

「猪原や鹿野など、猪や鹿の字が名前に入った方はけっこういます。わざわざ動物の名前を名字に入れた理由に興味が湧いて、調べていきました。

すると、古代には猪や鹿が貴重なタンパク源となっていて、たいへん重宝されていた時期が長いことがわかりました。

猪原はイノシシが出現する原っぱという意味で、狩りをする際の目印として特定の地域に名づけられたそうです。鹿野も同じ。その後、そこに住んでいた方が、そのまま名字にしたそうです。

名字から、猪や鹿は今の豚や牛と同様に貴重な食材であったとわかりました。普段は意識しない名字というものには、実は歴史が詰まっていると実感できる回でした」

 

歴史上の大人物が、名字を与えている例もある。番組では、源頼朝が、多くの庶民に名字を与えている例を紹介している。

鎌倉幕府をひらく前、戦に負けて逃亡しているときに自分を助けてくれた人たちへ名前を授けていたのだ。青木や中山、久保田、五味、平野もそうした名字だという。

「頼朝が、平家に追われて逃亡していくルートが、どういった道筋だったのか歴史的に詳しくはわかっていませんでした。

しかし、各地で授けていた名字を辿っていくと、逃亡中の行動が推測できる。歴史学者もわからなかったことが名前から見えてくる点が面白かったです」(前出・水髙氏)

当時、名字とは一般庶民にとって勲章をいただくようなもの。いまでも各地で、頼朝から授かった名字を誇りにして、頻繁にイベントを行って伝承している。

この回では、タレントの草彅剛も登場している。名字の草彅は、頼朝の4代前の武将・源義家から授かったものなのだ。義家が山越えをする際、草をなぎ払って案内していた先祖に感謝の意味を込めて、そう名付けられた。

最近の放送では、名字だけではなく身の回りのものの名前もとりあげている。食べ物の名前に関する話を紹介しよう。

たとえば、「卵」と「玉子」。語源を調べてみると、両者の違いがわかる。「玉」は貴重なもの、神聖なものという意味から玉子は「人の手が加えられ、誰かのために大切に調理されたもの」、卵は「殻に入った状態や、人の手が加わっていないもの」なのだ。

スタジオでは、たまごかけご飯を出して説明している。ご飯にかける前のたまごは「卵」だが、かけた瞬間に「玉子」になるわけだ。

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身近な病名を紹介する回では、風邪やインフルエンザの由来を時代劇仕立てに放送した。

古来、風にはいい風と悪い風があるとされ、悪い風は風邪と呼ばれていた。「風邪を引く」というのは、「風邪を体に引き込む」という意味からきているのだ。風は、病気を起こす原因と考えられていたため、多くの病名に風の字が当てられてきた。

江戸時代、お駒風と名付けられていたインフルエンザ。西洋では「インフリュエンサ」と呼ばれることを知った医者の伊東玄朴が、「印弗魯英撒」と当て字をしたのが日本に広まったきっかけだ。

これは、インド・フランス・ロシア・イギリスから撒き散らされるという意味。病名を調べてみると、日本人が病気と闘ってきた歴史も見えてくる。

この番組は、これからどういった展開を見せてくれるのだろうか。

「もちろん、名前というアプローチで日本人の精神史や生活史を紐解く作業は続けていきますが、今後は街歩きスタイルにしたり、たとえば『雑巾』という名前など身の回りのものの名前を掘ったりと展開していきます。

11月末には、名前目線でツアーをする企画を放送予定です。京都でロケをしたのですが、名前の由来を知りながら旅行をすると、とても楽しめるんです。

例えば、清水寺という名前は、どうして『しみずでら』とは読まないのか、実際に中を歩きながら解説しています。同じように、銀閣寺や祇園も回りました。『名前巡り』で新鮮な旅番組になっていますので、楽しみにしてください」(前出・水髙氏)

まだまだ、私たちが知らない名前のドラマはある。今後も見逃せない。

「週刊現代」2018年11月10日号より