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「木村さん」の由来にはすごい秘密が…
週刊現代 プロフィール

泣ける「指吸」家の家訓

名字ランキング1位の佐藤も、よく知られる「藤原一族の末裔」という説明だけではない。

佐藤は、藤原系の一族だったが、ポスト争いに敗れ優遇されなかった。そこで、都から遠く離れた東北で地方官僚として生きる道を選択。

佐藤は藤原一族とパイプを持つ名家として大きな影響力を持つようになったのだ。藤原への憧れも込めて、次々と佐藤を名乗る人々が増えていったという。

番組では、その経緯を、ラーメン店がフランチャイズ展開して勢力を拡大するドラマを作ってわかりやすく紹介した。

全国に約175万人いるといわれる鈴木は、もともと熊野地方の方言で、刈りあげた稲わらを積み重ねた「わら塚」という意味。千年以上前に熊野で生まれた熊野信仰が全国展開していくうちに、熊野神社を建立していた鈴木一族の名も広がった。

また、あの徳川家康も鈴木一族を広めたといわれている。古くから仕えていた三河鈴木家が、家康から東日本各地に領地をもらい、その地に鈴木が根付いていったのだ。

 

同じ「木」がつく名字でも、木村の由来にはすごい秘密が隠されている。これまでは「木が多い村に住んでいたから木村」という説が一般的だった。

ところが、番組の調査によると「木村の『木』の字は、紀氏の『紀』が由来している」という新たな説が持ち上がったのだ。

紀氏とは、紀伊国(現在の和歌山県)を中心として全国に拠点を築いた豪族。『土佐日記』で知られる紀貫之も紀一族の一人だ。

この「新説」には、全国の木村さんのみならず学者たちも沸いた。名字研究の第一人者として知られ、番組監修を務める森岡浩氏もその一人だ。

「木村は極めてメジャーな名字ですが、由来がハッキリしませんでした。同じ村がつく名字でも、中村という地名は全国に169ヵ所あるのに木村は5ヵ所と、土地が由来だとしても少ない。

疑問を抱いた番組が取材するうちに、『木村』とは『紀氏の村』ではないか、という仮説に辿り着いたのです。紀氏の研究者ですら考えたことがなかった、新たな学説レベルの驚くべき発見でした」

女子レスリングで、前人未到の五輪4連覇を達成した伊調馨の名字でも発見があった。

「インターネットなどでは、租税制度で知られる租庸調の『調』が関係する説がありました。ただ、ディレクターが必死に調べると、まったく違う説が出てきたのです。

伊調選手のお父様の実家はもともと青森県の新郷村ですが、その実家のすぐ裏に樹齢400年近いイチョウの木があったのです。それで、地元の方から『イチョウさん』と呼ばれていた。それから『イチョウ』と名乗り始めたそうです」(前出・国見氏)

木のイチョウと伊調選手に思わぬ共通点を見つけたと、国見氏は興奮気味に続ける。

「イチョウは寒さにも強く、植物界最強の木とも言われている。まさに、伊調選手の強さにも重ねてみたくなるような物語がありました」

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他にも変わった名字が次々と取り上げられる。

視聴者からの投稿がきっかけで放送された指吸には、調べてみると涙なしには見ることができないエピソードがあった。

「生前、視聴者の母親が隠し続けた旧姓(指吸)の意味が気になったそうです。そこで番組に依頼して調べたところ、『苦しいときにも悪いことには手を染めず、指を吸ってでも我慢しろ』という商家の家訓に因むとのこと。意味を知った本人や、VTRを見ていたスタジオの人も泣いてしまう回でした」(前出・森岡氏)