ライザップ、なにがヤバイのか?凄腕会計士とキーマンに見解を尋ねた

革命と綱渡り、それが難しい
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キャッシュが少なすぎる

人懐っこく、人間臭い。今時のカリスマ経営者像とはやや異なった印象だ。グループの中枢にはダイソーの元専務・内藤雅義氏や日産の元常務・長谷川亨氏など、各業種から経験豊かな面々が名を連ねる。これも瀬戸氏の求心力に依るところが大きいのだろう。

ライザップグループは'18年3月期決算で売上高は1362億円、純資産は428億円へと急成長。'20年度には売上高3000億円を目指すという。リーマンショック以降、もっとも業績を伸ばした企業のひとつだ。

だが、同社の経営状況について、ハッキリと疑問を呈する人物がいる。細野祐二氏――財務諸表について独自の分析を行い、上場企業1000社以上の財務危険度を精査してきた凄腕の会計士だ。

「まず懸念すべきは、ライザップの当期利益に対して営業キャッシュフロー(CF)が少なすぎることです。'18年3月期の純利益は92億5000万円なのに対し、営業CFはわずか8800万円にとどまっている」

営業CFは、商品の販売やサービスの提供など、企業が営業活動から得たキャッシュ量を示す。その会社が1年間にいくらのおカネを生み出せるかがわかる、重要な指標だ。

「そして利益を営業CFで割った数値を『会計利益先行率』と言いますが、ライザップの場合これが1万511%になります。日経平均株価が採用する企業の平均は45%程度なので、いかに突出した数字かということがわかると思います」(細野氏)

 

要するに、ライザップの手元にはほとんどおカネが入ってきていないのに、その100倍もの利益が帳簿上には書かれているということだ。

会計利益先行率の高さは成長している証でもあるが、一方で滞留在庫や不良債権の増加を示す「危険信号」のひとつでもある。

ではなぜこのような「キャッシュなき利益」が積み上がっているのか。それは企業を買収したときに生まれる「負ののれん」と呼ばれるものに起因する。

負ののれんとは、ある企業を、その企業の純資産額を下回る金額で買収した場合、その差額が当期純利益として即時計上されるものだ。

割安購入益ともよばれるが、たとえば純資産100億円の企業を80億円で買うと、差額の20億円は収益としてカウントされる。言葉の響きはネガティブだが、「企業をおトクに買えた」という意味でのれん代は純利益に乗っかってくるのだ。

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ライザップがここ5年間のM&Aで積み上げた「負ののれん」は155億円にのぼる。こののれん代が、同グループが近年たたき出している驚異的な利益のカラクリだ。

単年でみてみると、たとえばライザップグループの'18年3月期の当期純利益は前述のように約93億円だが、このうち負ののれんは88億円にもおよぶ。純利益の95%が、現金流入を伴わない帳簿上のおカネというわけだ。

「純資産よりも安く買える企業は当然、買収後も事業改善の見込みが薄い。ここで問題なのは、将来の営業損失を見込んで組み込まれるはずの『事業損失引当金』に関しては、簿外債務となっている可能性が高いことです。

企業を格安で買い叩いたことはポジティブな要素として純利益に反映される一方で、それに対する潜在的なリスクは帳簿上に表れない。ここが経営の健全性を疑うポイントになります」(細野氏)