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ネットを分断した「BTSの原爆・ナチ問題」とは一体なんだったのか

また噴出した「反日」という不毛な言説

11月9日放送のテレビ朝日系『ミュージックステーション』に登場予定だった韓国のボーイズグループ、BTS(防弾少年団)の出演が急遽中止となった。

番組側は、メンバーであるジミンが過去に着用していた原爆投下の写真がデザインされたTシャツを問題視、「総合的に判断した結果」として出演見送りを決定したという。

11日には、アメリカのユダヤ人団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」が、BTSが過去のライブでナチス・モチーフの衣装を着用したことを指摘。「原爆の犠牲者を嘲るTシャツを着用することは、過去を嘲るこのバンドによる最新の事例にすぎない」と強く非難した。

 

こうした中で13日夜に、所属事務所が公式に説明・謝罪を表明。原爆被害者を傷つけたり、ナチスや全体主義を支持したりする意図はなかったと説明した上で、「心から謝罪」することを明らかにした。

日本国内ではBTSを擁護・批判する声にそれぞれ分かれているが、ファンのみならず右派・左派を巻き込んで感情的な応酬も見られており、現時点でこの問題を冷静に俯瞰するような議論は、まだそれほど多くない。

そこで今回は「なぜBTSは原爆Tシャツとナチス・モチーフの衣装を着たのか?」と「原爆Tシャツとナチス・モチーフの衣装は問題なのか?」という2つのポイントに絞って、この問題を考えていく。

一体、BTSのなにが問題であり、なにが問題ではなかったのだろうか?

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グローバル化が進む第3次韓流ブーム

2017年から現在にかけて、日本は第3次韓流ブームを経験している。BTSや日本人メンバーも所属するTWICEなどK-POPはもちろん、ファッションやコスメなど幅広いジャンルにおいて、若年層を中心に韓国カルチャーの影響力が大きくなっている状況だ。

現在の韓流ブームは、ドラマ『冬のソナタ』に代表される第1次韓流ブームや東方神起、少女時代などが活躍した第2次韓流ブームとは、大きく2つの点で異なっている。

1つは、『冬ソナ』の突発的な流行とは異なり、近年の韓流ブームが意図的・戦略的に仕掛けられたものである点、もう1つは東方神起や少女時代などが牽引した第2次韓流ブームとは異なり、現在のK-POPが多くの意味でグローバル化している点だ。

そもそも韓国は音楽マーケットが小さく、国外をターゲットにした戦略を取らざるを得ない事情がある。そのため音楽をはじめとしたカルチャーの輸出は国家戦略として注力されており、アジアを中心とした世界各国にアイドルや音楽カルチャーを拡張することが求められてきた。

そのため韓国は、中長期的な視野で自国のカルチャーをグローバルに輸出する戦略をとってきたが、特にここ数年はそれが見事に結実している。BTSがビルボード・チャートで首位を獲得したことはまさにK-POPのグローバル化を象徴する出来事ではあるが、「グローバル化」は単に国外へのコンテンツ輸出を意味するわけではない。

第3次韓流ブームにおいて最も注目すべきは、K-POPアーティストのメンバーが多国籍化している点である。

たとえばTWICEは日本・台湾・韓国の多国籍グループであり、東方神起やEXOなどを輩出した大手事務所であるSMエンターテイメントは、日本や中国、タイ、カナダ出身のメンバーなどから構成されたNCTというボーイズグループをデビューさせている。BIGBANGを輩出したYGエンターテイメントのガールズグループ、BLACKPINKにもタイ人がいる。

すなわち、現在のK-POPは韓国人が日韓を中心に活動するものではなく、多国籍なメンバーがグローバルに活動をする枠組みとなっているのだ。