水産業界「戦後最大の改革」と、ニッポンの漁業「哀しき現状」

ついに「漁協の核」にメスが入る
松岡 久蔵 プロフィール

水産関連の予算獲得については、「満額獲得は極めて困難」(財務省関係者)との見方が強かった。

ただ、政府としては安倍首相が再選された9月の自民党総裁選で地方票の離反が見られたことや、沖縄県知事選での野党候補・玉城デニー氏の当選、年明けに始まる日米新貿易交渉を巡る農家からの不信感の高まりなどを背景に、来年の参院選に向けて可能な限り漁業者を味方につけたい思惑がある。

当の漁業者にしても、裏付け予算なしの規制緩和は承服できない。実際、沿岸漁業者を中心に構成される全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長は、自民党の会合で「概算要求額の満額は不可欠」と釘を刺した。ある自民議員からは「1000億の上積みはないと納得しないだろう」との予想も上がった。

 

「改革のための改革」のゆくえ

最終的に決定した水産関連予算は、当初予算では前年度比2割増の総額2167億円となった。概算要求の3003億円を大幅に下回るものの、18年度の補正予算などと合わせると総額3200億を獲得した。全漁連の岸会長は自民党の予算獲得結果の報告会で「立派な予算をいただいた」と満面の笑みを浮かべ、参院選についても「来たるべき選挙で自民党を支える」と明言した。

結果として全漁連側と折り合いを付けるのに十分な予算を獲得できた水産庁だが、予算の交渉過程はスムーズとは言えなかった。前年度から倍近い要求に対し、当初財務省が提示した額は2000億円前後。財務省側からの、当初予算であまりに大幅な増額を認めれば、再来年度から同規模の予算を要求されるとの警戒感からくる「辛口査定」だった。

これに対し、水産庁側は慌てて再交渉を求めたが、難航した。農林族の江藤拓首相補佐官が財務省まで自ら出向き直談判する場面もあった。水産庁側は安倍首相が「速やかに必要な法整備と十分な予算措置を講じていく」と発言したことを大義名分に、増額を再度要求。当初予算として、沿岸漁業者に高性能の漁船や漁具を割安価格で貸し出す事業に100億円を計上させることなどを認めさせ、補正予算で「穴埋め」することで合意した。

今回の予算獲得過程をめぐっては、全国紙の政治部記者は「出来レース」と冷ややかに見る。「財務省は首相発言が前提にあるので、基本的に3000億円程度の予算は想定していたはずです。安倍政権と距離のある財務省が、官邸主導の改革予算を一度拒むことでメンツを保ったのでは」と分析する。さらに、「全漁連の岸会長は地元が島根県で、『参院のドン』こと青木幹雄氏がバック。安倍政権も参院選を前に余計な敵を作りたくなかったとの計算もあった」と振り返る。

予算の裏付けがつき、今後は省令で具体的な法律の中身を策定する段階に入った。水産改革関連法は公布から2年後に施行される。「改革のための改革」と揶揄された水産改革の真価に注目が集まっている。