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水産業界「戦後最大の改革」と、ニッポンの漁業「哀しき現状」

ついに「漁協の核」にメスが入る

水産業界「戦後最大の激震」

企業の養殖業への参入促進と漁業資源管理の強化を柱とした水産改革法案が12月8日、成立した。養殖業に必要な漁業権制度を含む大きな見直しは約70年ぶりで、水産業としては戦後最大の改革法案だ。

政府は、国際的に漁業資源管理の動きが強まる中で、国内で漁獲量を調整できる養殖業を推進したい考えだが、収益性の低さなど課題は多い。

 

そもそも「漁業権」とは、海や湖の一定の場所で水産物を取ったり、養殖したりする権利を指す。いけすやいかだを使って、タイやホタテなどを養殖する場合にも必要となる。

この漁業権は、水域や養殖の事情に詳しい漁業協同組合に優先的に与えると漁業法で定められている。現行法では、主に沿岸水域の地元漁協に一括して権利が与えられる仕組みになっており、これには有効利用されていない水域の漁業権も含まれている。

このため、企業などが養殖業を始める際に漁協との調整が必要になり、これまでは漁協に加入しないと新規参入が難しい現状があった。漁協に加入した場合でも、「漁業権を行使する権利代」として「負担金」の支払いが求められていたが、その算定根拠は不明確で、一部の商社など、「まるで『ショバ代』のような不透明なカネなんて、支払いたくない」と参入を断念する例も少なくなかった。

だが、今回の改革法案では、漁協に漁業権を優先的に付与するルールが廃止され、企業が直接都道府県から取得できるようになった。また、有効活用されていない水域については、漁協の漁業権を廃止できることも決まった。漁協に加入していない企業の参入のハードルを下げて、誘致を進めるのが政府の狙いだ。

実際、商社筋などからは「地元の水域管理を担う漁協との調整が必要なのは変わりないが、これで参入の後押しになる」と歓迎の声も上がっている。

背景にある「日本の水産業の衰退」

漁業権制度の見直しによる企業の養殖業参入を進めたい政府の思惑には、日本の水産業の衰退がある。

2016年の養殖を含めた国内漁獲量は436万トン。ピークだった1984年の約3分の1に低迷しており、養殖はこのうち2割強を占める。

しかし、世界的に見ると養殖業は漁業生産量全体に占める割合が5割を超えるとされる。水産庁は、国内漁獲量の増加に直結する養殖業の引き上げが、水産業の成長産業化に欠かせないとみている。

少子高齢化による漁業の担い手不足も深刻だ。水産庁によると、2017年の漁業就業者は65歳以上が約4割。09年以降、新規就業者は年間1900人前後にとどまっており、漁業人口の減少は避けられない。同庁は資本力のある企業の参入で、効率的な養殖場を整備することが漁村の若者の雇用安定にもつながると期待する。

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ただ養殖業は、魚種によっては小資本で参入できるメリットがある一方、餌代が割高で価格が天然物の漁獲高などに左右されるなど、安定的に収益を上げ続けることが難しい。漁協側も企業の参入について「誘致に労力をかけても、すぐに撤退されたらたまらない」と、水産庁に企業とのマッチングや補助金による支援を要望している。