介護で“施設難民”化はどうやったら避けられるか

親や配偶者のために知っておくべきこと
上村 悦子 プロフィール

「おたくは対象に入っていませんよ」と言われて

そこで、今度は自力で自宅近くに別の老健を見つけ、相談員(老健の職員)に事情を話して1週間後になんとか入れてもらうことができた。しかし、案内されたのは何と、1ヵ月27万5000円もかかる個室。何とか半年がまんした挙げ句、「4人部屋に替えてもらえないか」と頼んだところ、頼んだ2週間後に4人部屋に替わることができた。

しかし、大部屋に移って4日後には、もう、

「次の施設を探しておいてくださいよ」

と告げられてしまった。"個室なら長期間預かるが、4人部屋は3ヵ月、長くて6ヵ月で退所を迫る"というのが、この施設の暗黙のルールだったようだ。すぐ次の老健を探したが、「10ヵ所ほど打診してやっと入れました」Bさんは当時を思い出して、こうため息をついた。

【写真】暗黙のルールのためすぐ次の老健を探した
  "4人部屋は数ヶ月で退所を迫る"という暗黙のルールがあったため、Bさんはすぐ次の老健を探した photo by iStock

さすがに懲りたBさんは、新しい老健が見つかったところで、念のため最初に入所を申し込んだ特養に改めて連絡を取ってみた。今後、いつごろ入れるのか問い合わせておきたかったのだ。すると、特養の職員から返ってきたのはこんな思いがけない言葉だった。

「お宅は介護できるご主人がそばにいらっしゃいますし、特養入所の基準を満たしていません。選考対象には入っていませんよ」

一瞬呆然となったが、「妻は要介護3から4になり、自分もいろいろな病気を抱えていて困っている」と、Bさんはあわてて詳しい事情を説明した。すると、困っている様子が伝わったのか相談員の対応はがらりと変わり、1ヵ月後には入所の案内が届いた。

「それが大きく風向きを変えてくれました」

介助の負担が減っただけではない。閉じこもって不満ばかり訴えていた妻が、人とのふれ合いが増えたことで精神的に落ち着けたのも助かったという。

「妻は、施設でいろんな人の話を聞き、自分よりも重い障害で困っている人がいっぱいいることを知ったんです。自分の不幸を悲しむだけではなく、人への気遣いもできるようになった。世界が広がったのがよかったようです」

特養に移ってからは、無理のない範囲で面会に通っているというBさん。妻を車イスで外に連れ出し、一緒にスーパーなどへ買い物に行くこともある。

【写真】】外に連れ出すこともある
  無理のない範囲で面会に訪れ、車イスで外に連れ出すこともある photo by iStock

いろいろな施設に出入りして後悔を重ねたBさんだが、「施設との関わり方」について学んだことは大きいという。ひとつは、

「特養の選考条件は実に曖昧模糊(あいまいもこ)としている。こちらの苦しい現状を訴えて、何とか入れてほしいと頼むと特養サイドも考えてくれるんです」

当たり前のことを言っているようだが、介護施設の入所は先着順に決まるわけではない。たとえば特養は入所に優先順位があり、「独り暮らしで介助してくれる人がいない」とか、「重い認知症で自宅に住み続けるのが困難」といった、一刻も早く援助が必要な人から先に受け入れることになっている。だから利用したいなら、自ら情報を探し「助けて欲しい」と諦めずに伝える姿勢が必要なのだ。

また、いい施設を選び、入所した人が暮らしやすい環境を作っていくのも、介護で後悔しないコツだとBさんは言う。では、どうすればいい施設を選べるのか。そして、暮らしやすい環境を整えられるのか。詳細を知りたい方には、新刊『あなたが介護で後悔する35のこと』をぜひ読んでいただきたい。

Bさんをはじめ、施設選びでつまずいた人の体験談とともに、介護の専門家が教えてくれた「後悔しないですむ心得」も掲載した。介護がもう始まっている人にも、まだ始まっていない人にも参考になるはずだ。

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家で看ても施設に預けても、兄弟姉妹・親類縁者と仲が良くても悪くても、終の棲家がどこであろうと、悔いなく終わった介護はひとつとしてない。でも、後悔は必ず減らせます。 介護の“先輩”たちの体験を徹底取材。迷ったとき「どうすればいいか」がわかる本です!