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# 米国経済

中間選挙後のトランプ政権の「対日・対中ディール」はこう変わる

「ねじれ議会」はむしろ好都合だった

「ねじれ=レームダック化」ではない

中間選挙が終わり、トランプ大統領の政権運営は後半戦に突入する。

今回の中間選挙では、大方の予想通り、上院では与党共和党が、下院では野党民主党がそれぞれ議会の過半数を獲得した。前回の大統領選では、上下院とも与党共和党が過半数を握っていたので、今回の中間選挙では野党民主党が盛り返したことになる。

このような結果に対し、多くのメディアは、専ら、議会の「ねじれ(上下院で過半数を有する政党が異なること)」からトランプ政権の政策が立ち行かなくなるリスク(いわゆる「レームダック化」)を指摘しているようである。だが、筆者は、今回の中間選挙の結果を受けて、トランプ政権の政策は新たな段階に入っていくのではないかと考える。

この背景には、1) 下院における共和党保守派の勢力後退、及び、2)次回の選挙で苦戦が予想される上院に対する配慮の可能性(前々回の選挙で共和党が圧勝したため)、がある。

そして、これらを考慮すると、1) 財政支出拡大(インフラ投資を中心とした)、2) 貿易政策は農産物・資源分野の輸出拡大へ舵を切る3)中国に対する新たな「ディール」を行う可能性が高いのではないかと考える。

読者の方は既にご存じであると思うが、共和党保守派の経済政策は、「小さな政府」という「原理主義」的傾向が強い。そのため、政権前期では、減税政策についてはトランプ大統領の懸命な説得によって議会の承認を得られたものの、インフラ投資を含む財政支出拡大についてはトランプ政権前期にはほとんど進展がみられなかった。

だが、今回の中間選挙で共和党(主に保守派)が相当程度議席を失ったことから、経済政策を推し進めるためにはトランプ大統領は民主党中道派との妥協を模索せざるを得なくなった。つまり、共和党の下院での敗北によって、逆に民主党と協調できる展望が開けた可能性がある。

 

米国は日本と異なり、議会審議で政党の縛りがなく、各議員の判断によって是々非々で議案の採決に臨むことが多い。インフラ投資を含む財政支出拡大は、元来は民主党的な政策であるので、逆にインフラ投資が拡大させる余地が高まったともいえる。日本的な議会運営を前提に、「議会のねじれ」がそのまま「政権のレームダック化」につながると考えない方がよいのではなかろうか。

また、上院における共和党の現有議席は、都市部より中西部等の地方が多く、それらの地域には農産物や資源の生産地が多い。しかも、これらは米国の主力輸出品目であることから、トランプ政権は、農産物や資源輸出の拡大を政策目標に掲げる可能性がある。

もし、そうだとすると、トランプ政権は、日本に対して、個別交渉で農産物のさらなる開放(関税率の引き下げ、もしくは撤廃)を求めてくる可能性が高まる。

さらにいえば、来年以降、米国内での自動車販売が底打ち反転した場合、ここまでのところ沈静化している「自動車関税問題」が浮上してくるかもしれない(筆者は、トランプ政権がいまひとつ自動車問題に熱心ではないのは、自動運転などの技術革新の進捗が予想よりも進んでいないことに加え、米国内での自動車販売がいまだに不調で耐久消費財のストック調整を終えていないのも一つの理由ではないかと考えている)。

そして、「自動車関税問題」が農産物と資源(シェールオイル・ガス)の輸出拡大のための「ディール」の材料として浮上してくる可能性もあるのではないかと考える。