Mona Lisa, by Leonardo da Vinci, from C2RMF retouched

ピカソは無名時代に「モナリザ」を盗んだ容疑で逮捕されていた

知られざる巨匠の過去

逮捕され、大号泣

美しい女性は引く手数多。なかでも、歴史上数多くの人がその美を手中に収めようとした女性がいる。『モナリザ』だ。

1911年の夏、『モナリザ』のスケッチに来たある画家が、絵があるはずの壁に、額縁を固定する釘しか残っていないのを発見する。『モナリザ』が盗まれたのだ。

この事件の犯人として、あのピカソが容疑をかけられる。当時ピカソは29歳で、まだ無名の画家だった。ピカソはかつて、ある山師から盗難品と思しき古代イベリア彫刻を買ったことがあった。

 

この小犯罪が災いとなる。件の山師が容疑者に挙げられ、関係者が芋づる式に警察へと連行。事件発生の翌月に逮捕されたピカソは、パニック状態で泣き叫び、自分は何もしていないと訴えた。最終的には、無実が判明し、無事に釈放される。

事件の真相は、2年後、真犯人の逮捕で白日のもとに曝される。真犯人はルーブル美術館で働いていた大工で、従業員しか知らない小部屋に隠れ、犯行に及んだ。

彼の背後には、大物詐欺師がいた。この詐欺師は、大工に『モナリザ』を盗ませて隠し持つように指示。名画を密かに自分のものにしたい大金持ちに、偽造したモナリザを本物の盗品として売りつけていたのだった。

しかし、ピカソは本当に『モナリザ』を盗んでいなかったのだろうか。

ピカソは、1907年に絵画の革命と言われる『アヴィニョンの娘たち』を描く。複数の視点から見たパーツで顔が描かれ、ピカソと言われてまず思い浮かぶような絵だ。

『アヴィニョンの娘たち』(Photo:Museum of Modern Art, New York)

その4年後に盗まれたのが『モナリザ』だ。実は、モナリザの顔は斜め前を向いているが、向かって右側の顔半分を隠して顔の左側だけを見ると、顔は正面を見ている。つまり、『モナリザ』は複数の角度から見たパーツが合成されており、その歪さが神秘的な美を生み出しているのだ。

モナリザの美の本質を、自分のやり方で描き直し、その美しさを我が物にしたピカソは、歴史上最も静かに『モナリザ』を盗んだとも言えるだろう。(征)

『週刊現代』2018年11月24日号より