CIAの「組織崩壊マニュアル」から読み解く、日本企業のヤバイ悪弊

あなたの会社が非効率な理由が見える
加谷 珪一 プロフィール

トレードオフという概念が極めて希薄

No4「可能な限り頻繁に無関係な話を持ち出せ」

これはNo3の会議と共通する話だが、大人数になればなるほど、主題と無関係な話を持ち出す人が増えてくる。和を重視する日本の組織では「その話は主題と関係ない」と指摘した人の方が「和を乱した」といって批判されるケースも多い。結局、テーマは発散し、結論が得られないという状況に陥ってしまう。

No8「あらゆる決断に対して懸念を示せ」

日本の組織では、トレードオフ(どちらか一方を追求すれば、どちらが犠牲になるという意味)という概念が通用しない。利益率を上げる施策と売上高を最大化する施策は、たいていの場合、矛盾するが、営業現場では「売上高をもっと伸ばせ」「だが利益率は下げるな」といった指示が平気で出てくる。

意思決定も同じで、ある決定をすれば、何かが犠牲になるといった考え方は許容されないことが多い。このため、ある決断に対しては、「リスクが高い」「雇用に影響する」「企業イメージが損なわれる」など「やらない理由」が次々と出てくる。

和を重視すれば、結局、何の決断もできないことになる。その結果として、何も決められず、ただ時間だけが過ぎるというパターンが非常に多い。

 

日本人の底力が試されているのは「今」

日本企業のこうしたムダは以前から指摘されていたが、需要が旺盛だった時代には、この問題が顕在化することはなかった。だが、消費者のニーズが多様化し、場合によっては自ら需要を作り出す必要がある現代社会においては、こうした組織のムダは致命的な影響を及ぼす。

働き方改革は日本にとって必須のテーマだが、労働集約的なビジネスモデルを変えなければ、労働時間の削減はそのまま生産の縮小につながり、売上高と利益の削減をもたらしてしまう。日本全体で見れば、これは明らかにGDP(国内総生産)にとってマイナス要因となるだろう。

2人でできる仕事を3人や4人で行っていては、人手不足が深刻化するのも当然である。人手不足が解消されないまま、生産が縮小すれば、不景気でのコスト上昇をもたらし、最悪の場合にはスタグフレーションに陥る。

慣れ親しんだ業務のやり方を変えるのは簡単ではないが、日本経済には、もはやそのような「甘え」を言っている余裕はない。諜報機関が作ったマニュアルが示す恐ろしい未来を回避するためには、仕事の進め方そのものを「変える」勇気が必要である。日本人の本当の意味での「底力」が試されているのは、今、まさにこの時である。