なぜ中国人は運転中のバス運転手に襲い掛かるのか

頻発する「自己中」事故の実態
北村 豊 プロフィール

実は同種の事故が頻発している

これが「2018年重慶万州路線バス長江墜落事件」の全貌だが、中国では劉桂平と同様な身勝手なバスの乗客による運転手に対する暴行事件が頻発している。上述した事件の発生後に起こった実例を挙げると以下の通り。

 

1)10月29日の午前中、北京の678号路線バスの車内で鄧某<女、57歳>が本来下車するはずの停留所を乗り過ごしたと言って、運転手にバスを停車させるよう要求した。

運転手はすでに停留所を発車したとしてこの要求を拒否したところ、鄧某は突然手にしていた牛乳パックが詰まった重い紙箱を振り上げて、「ドアを開けろ」と怒鳴りながら運転手の手に攻撃を加えた。

運転手はこれをかわそうとしてハンドルを切ったが、車線を外れたので慌ててブレーキを踏んだが、左側を走行していた小型乗用車に接触して先方の車体を傷付けた。

この事件では、鄧某が「危険な方法で公共安全に危害を及ぼした罪」の容疑で北京市豊台公安分局によって刑事拘留された。

2)11月2日の午前11時頃、江西省新余市で103号路線バスが走行中に、65歳の男性乗客が突然運転席に近付き、下車するから停車しろと女性運転手に要求した。

女性運転手が、前方十数メートルの場所に停留所があるから少し待つようにと応じると、男性乗客は激高し、いきなり女性運転手が握るハンドルをつかんで回そうとした。

危険を感じた女性運転手はバスを急停車させると即座に交通警察へ通報した。女性運転手はわずか5日前に重慶市万州区で発生した路線バスの長江墜落事件を思い出して恐怖におびえたという。

3)11月4日の午前9時頃、湖南省湘潭市で123号路線バスが走行中に、赤い袋を持った高齢男性が運転席横の乗降口に来て、停留所を乗り越したからバスを止めろと騒ぎ出した。

運転手が次の停留所に停車するから待ってくれと言うと、それを我慢できない男性は突然運転手が握るハンドルに手を伸ばして右へ回わそうとした。

次の瞬間、運転手が男性の顔を平手打ちしてこれを阻止し、不意を突かれた男性が運転席から離れたのを見極めて、バスを急停車させて事なきを得た。

その後、車内では乗客たちが男性の行為を厳しく非難したというが、現在この事件は交通警察が調査中であるという。

なお、中国メディアが調べたところでは、2018年4月から9月までの間に報じられた「乗客がバスの運転手からハンドルの操作を奪い取った事件」は中国全土で7件に及んだという。