総務省の家計調査('17年度)によれば、高齢者の夫婦世帯は平均毎月5万円以上の赤字だ。夫婦一丸となって「相続・年金・貯金」を、正しい方法で運用していかねばならない。
1月から、いよいよ相続にかかわる民法改正が施行される。改正にはメリットもある。だが、家計や老後マネーにとっては、厳しい部分も増えてきそうなのだ。
「税務署の実務は大きく変わることが予想されます。これまで見逃されてきた税逃れの手法にも、税務署は厳しい視線を送ることになるでしょう」(吉澤相続事務所・吉澤諭氏)
新しい革袋には新しい酒を、だ。新ルールのもとで、絶対得する方法を、項目別に伝授していこう。
まずは何よりも相続対策だ。自分が亡くなった後、最愛の妻にどうやって資産を残すべきか?
今回の民法改正のポイントは、未亡人となる妻の生活をより重視することにある。夫が亡くなっても、妻が家に住み続けることができる「配偶者居住権」が新設され、また婚姻20年以上の夫婦に対して、贈与時の妻の権利が拡充された。
どんな妻が配偶者居住権で得をするのか?
配偶者居住権が設置されたのは、以下のようなケースを解消するためだ。遺産分割の際、妻が家を相続してしまうと、手元に生活資金が残らない。子どもたちに法定相続分の資産を残そうとすれば、自宅の売却を迫られ、妻は住む家を失う……。
だがこれからは、妻が配偶者居住権を設定すれば、自宅を売却せずとも、資産をうまく子どもと分け合うことができる。下の図の①で、住宅6000万円のうち、居住権が3000万円であれば、残りの3000万円分の所有権を子ども2人が相続できる。
こうして妻は3000万円分の居住権と、2000万円の現金を相続することができるというのだ。
夢のような制度に見えるが、この居住権にはデメリットも多い。
「年齢が若い妻は居住権に守られないでしょう」というのは、夢相続代表の曽根恵子氏である。
「居住権の価値を法務省の簡易評価法で試算すると、妻の平均余命が長ければ長いほど、居住権の価値が高くなり、短ければ短いほど安くなります。
つまり若い妻ほど相続できる現金が減り、高齢の妻ほど増えることになる。その分岐点はおおむね65~75歳あたりです」
50歳程度の若い妻なら、居住権が足かせとなるというわけだ。居住権を得てしまうと、自宅を売却するためには、所有権を持っている子どもたちの同意が必要になる。得られる現金は少ないうえに自宅も売却しづらい。
逆に70歳を超えていれば、豊富な現金が手元に残り、終の棲家も確保することができる。なかでも、最大のメリットを享受できるのは誰か?
「70代以上の方のうち、子ども夫婦と同居している妻でしょう。介護が必要になっても安心です」(曽根氏)
子ども夫婦との同居世帯には追い風というのは、前出の吉澤氏も同意見だ。
「母と嫁との関係が悪化し、母が追い出されてしまうようなケースで、居住権は有効です。
しかも今回の民法改正では、嫁が義父母の介護にあたった際の寄与料も認められました。同居していると小規模宅地の特例が使えて、子ども夫婦にとって2次相続の際の税の減額メリットも大きくなるのです」