確定申告の奇妙な案内…国税庁はマイナンバーカードを見限ったか

IDとパスワードでOKになるらしい

そもそもe-Taxがスタートしたのはもう14年も前、2004年6月1日のことだった。小泉政権が推進した「e-Japan戦略」の中核プロジェクトで、2003年8月に交付が始まった住民基本台帳カード(住基カード)とともに、「世界最先端のIT国家を目指す日本」の象徴となる…はずのシステムだった。

当初、財務省と総務省は住基カードとe-Taxを普及すべく、「住基カードを使って確定申告をすれば、納税額から5000円を減免する」と打ち出していた。ネットで確定申告を行うには、カードリーダーを購入しなければならない。その代金分を減免しましょう、というのが主旨だったのだが、それだけでなく、e-Taxを使うためにはパソコンに専用ソフト(Javaアプレット)もダウンロードしなければならない。毎年のように、バージョンやパソコンのOSが違うと適正に動作しないといった問題も発生し、e-Taxはなかなか普及しなかった。

 

こうした状況を考えれば、今では確定申告をする人のうち65.3%もe-Taxを使っているなんて、立派じゃないか……と思ってしまうかもしれない。だが前述したように、家庭でマイナンバー+カードリーダーを使って、e-Taxで申告しているユーザは61万5000人と、全体のわずか6.6%。「各種ソフトとe-Tax」、つまり税理士などによる代行を合わせても、ICTを使った提出件数全体の3割強にすぎない。

年に1度、所得税の確定申告でしか使わないe-Taxのために、わざわざ専用のカードリーダーを用意するのは、よほど国の制度に忠実な人か物好き、もしくはITオタクだろう(失礼)。と同時に、その多くは住基カードのときからの「カードリーダー+e-Tax」タイプのユーザである可能性が高い。

このタイプのユーザは、昨年比で見れば10%増えているとはいえ、それでも伸び率としては小さすぎる。「マイナンバーカードの交付が始まったので、利用者も増えた」とまでは言い難く、要するに頭打ちの状況だ。

で、結局は対面の本人確認か…

国税庁はこうした現状を踏まえて、「導入後、概ね3年」という期限付きで「ID+パスワード方式」の導入に踏み切ろうとしているのだろうが、よくよく考えると、これは事実上「マイナンバーカード+カードリーダー方式」を断念する敗北宣言なのではないか。

「ID+パスワード方式」はネットバンクやクレジットカードでも採用されていて、一般のビジネスマンには馴染みがある。利便性は格段に高まるし、面倒なマイナンバーを不要とする「英断」にも思える。

ただ、冒頭の書面によればIDとパスワードの発行は「お近くの税務署で、職員との対面による本人確認後」だという。結局はお役所得意の「窓口主義」の発想。またしても、税務署職員の仕事が増えるだけか……と同情したくもなってくる。