2018.12.17
# 脳科学 # 錯視

なぜ静止画が動いて見える? 「錯視」の謎はここまでわかった!

渋滞解消にも応用できる最新研究を紹介

また色も錯視に深く関わっている。「色の恒常性」錯視もその一つだ。

シアン(青緑)色の画素でできたイチゴの画像を見ると、赤い画素はないはずなのにイチゴが赤く見える。これは脳内で色を補正することによって起こるという。

「色の恒常性」錯視「色の恒常性」錯視。赤い画素はないのに赤いイチゴが見え(左)、青い画素はないのに青いイチゴが見える

その他、北岡はこれまでに「色依存の静止画が動いて見える錯視」などを作成し、そのメカニズムを説明してきた。

「こうした錯視研究の知見は、医療や福祉、建築、交通、環境デザインなど実社会のさまざまな領域にも応用可能です」と北岡。

渋滞の「起点」を錯視で解消

對梨は錯視を利用して交通課題の解消に貢献しようとしている。その一つが縦断勾配錯視(縦方向の傾斜の錯視)を用いた交通渋滞対策だ。

「下り坂から上り坂に差しかかるサグ部で渋滞が起こりやすいことはよく知られています。これは下り坂から上り坂への縦断勾配の変化が緩やかなために、運転者が上り坂になったことに気づかずにアクセルを踏まないことが原因です」と對梨。

それに加えて、遠坂が見えること自体にも原因があると考えているという。

對梨らは実際の高速道路のサグ部に着目し、現状の道路よりも上り方向に傾斜して見せる縦断勾配錯視の効果を検討した。

京葉道路の穴川東ICから貝塚ICまでの上り線は、サグによって交通渋滞が発生していると考えられている区間だ。このサグの遠坂をより急な上り坂に見せることで、ドライバーにアクセルを踏ませて渋滞を解消するのがねらいだ。

坂道の縮小模型を用いて縦断勾配錯視に影響を及ぼすと考えられる坂道を囲む四方の視環境の傾斜や側壁の水平パターンの傾斜、側壁の高さ、側壁の水平・垂直パターンの傾斜と交差などを検証。この知見をもとにサグ部の側壁に傾斜した水平パターンを描き、縦断勾配錯視を緩和する方法を考えている。

高速道路と錯視
  京葉道路の穴川東ICから貝塚ICまでの上り線に、傾いた横縞を描いた側壁を設置する縦断勾配錯視のシミュレーション(下)。道路が側壁のない現状(上)よりも上り方向に傾斜しているように見える

いまだその多くが解明されていない脳神経系の機構に迫ることから工学分野への応用まで、錯視研究が担う領域は実に幅広い。

北岡明佳[写真左]総合心理学部教授
研究テーマ:傾き錯視の研究、色の錯視の研究、錯視の現象学的・心理物理学的研究、視覚的ファントムの研究、静止画が動いて見える錯視の研究
専門分野:実験心理学
對梨成一[写真右]文学部助教
研究テーマ:坂道の傾斜知覚の研究
専門分野:実験心理学

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