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20代から女性関係に悩み…ぼくはなぜ女性より上に立ちたかったのか

生きづらさの理由が「男らしさ」?
21歳にして文藝賞を受賞したデビュー作『野ブタ。をプロデュース』が芥川賞候補にもなり、テレビドラマ化されて大ヒット――。2004年にそんな輝かしい文壇デビューを果たしたのが、小説家の白岩玄さんだ。白岩さんは先日デビュー14年目にして『たてがみを捨てたライオンたち』という小説を上梓した。この作品は、20代から感じていた白岩さんの「男の生きづらさ」を3人の男性を主人公にして描き出した、数年がかりの作品だという。
なぜ、これ以上にないほどのデビューを飾った小説家が「生きづらさ」を感じていたのだろうか。作品の根底にある白岩さん本人の経験を寄稿してもらった。
 

「恵まれすぎた」デビュー

21歳のとき、ぼくは小説家としてデビューした。2004年の11月に発売されたその処女作「野ブタ。をプロデュース」は、年末には芥川賞の候補になり、翌年にはテレビドラマ化された。正直言って、恵まれすぎていたデビューだったと思う。ただ、若くして結果を出したことによって、ぼくはいろいろと厄介な問題を抱えるようにもなった。

ひとつは、恋愛のことだ。ぼくには当時付き合っていた年下の彼女がいたのだが、自分がちょっとした有名人になったと思い込んだがゆえに、相手のことをどこかで下に見るようになってしまった。

たとえば口喧嘩をすれば、才能のある自分がその場をおさめようとせんばかりに相手を丸め込もうとしてしまうし、悩み事を相談されれば、自分に解決できないわけがないと偉そうにアドバイスをしてしまう。

もともとプライドが高くて、他人の意見を聞くよりも自分の考えを押しつけるようなところがあったから、社会的に認められたことで、それが助長されたのだろうけど、それにしてもなかなか嫌な男だったと思う。

もうひとつは、お金のことだ。単行本が70万部売れたことや、ドラマ化の二次使用料などで、ぼくのところにかなりの額の印税が入ってきた。それまで月々のバイト代くらいしか収入がなかったぼくの通帳の残高が、突如として一目では把握できないような桁の数字になったのだ。

ぼくはなんだか自分が大きな力を手にしたように思えて、それ以降、精神的に余裕を持てるようになった。それだけならよかったのだが、いつしかその余裕が慢心へと変わり、結果的にぼくを不遜にしたのだ。

『野ブタ。をプロデュース』のドラマは亀梨和也、山下智久、堀北真希の主演で大ヒットした

「優越感」と「クズな感覚」とのはざま

もちろん当時も何かがおかしいとは思っていた。交際相手の上に立とうとするのは、どう考えたって必要のない行為だし、お金によって自信をつけるのも、使えばなくなってしまうものだからこそ、危なっかしい感じがした。でもそのときは、自分自身でブレーキをかけることがどうしてもできなかったのだ。

肩書きや収入といった社会的な力を保持していることの気持ちよさに抗えなかったし、実際、そういったものを持っているだけで、周りの人が一目を置いたり、感心したりしてくれた。だから、ここには何かマズいものが含まれていると感じながらも、ずっと気づかない振りをしていた。