業界がざわついた
「ターゲットはEC(電子商取引)だ」「アマゾンが狙い撃ちにされるのではないか」「いや、アップルが運営するアップ・ストアが危うい」――。
先週月曜日(11月5日)、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの総称)の一角に位置する米系巨大IT企業の日本法人がハチの巣をつついたような騒ぎになった。
政府3機関(経済産業省、総務省、公正取引委員会)が共同で設置した「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」の中間報告書を公表し、世界経済を席巻しているGAFAなど巨大プラットフォーマーに対する包括的な法的規制を目指す方針を鮮明にしたからだ。
中間報告書は、今年7月に学者らを集めて設置されて以来、秘密裏に7回にわたって開催してきた会合の論議の結果をまとめたものだ。
プラットフォーマーの社会的、経済的な貢献を認めつつも、寡占化・独占化し易い業態だと指摘。それぞれが多数の企業や消費者が参加する市場を創って運営しているにもかかわらず、証券取引所や卸売市場のような法的規制を受けておらず不透明として、プラットフォーマーに対する規制強化の必要性を訴えた。
具体的な規制強化策としては、独占禁止法、各種の事業法、欧州委員会が制定した一般データ保護規則(GDPR)のような個人情報の保護法などの制定・改正のほか、常設の監視機関の創設も示唆するものになっている。
政府3機関は中間報告書で打ち出した規制強化策について、年内に事業者ヒアリングとパブリック・コメントを終えて基本原則を策定したうえ、早急に具体的措置を講じるという。様々な法整備や関連法の運用強化が来年中に実現するかもしれない。
永田町や霞が関の事情に通じた人なら、今回の鳴り物入りの検討会を、経産省、総務省、公取委が仲良く主催した点に違和感を持つはずだ。
というのは、経産省と総務省(旧郵政省)と言えば、1980年代初頭に、付加価値通信サービス(VAN)の所管を巡る熾烈な縄張り争い「VAN戦争」を繰り広げて以来、霞が関の官庁街では知らない人がいないと言われるほどの犬猿の仲だからである。
その2省が仲良く組むだけでも驚きなのに、長年にわたって経産省、財務省からトップを送り込まれ続けて、産業育成行政に否と言えない体質が滲みついてしまい、「吠えない番犬」と揶揄されてきた公取委も加わって、世界経済を牛耳るプラットフォーマーを規制するという野心的なプロジェクトに挑むというのだ。