なぜか新司令部を設置…相模原の米軍「巨大補給基地」を巡る謎の動き

駅前の一等地が分断され続ける
半田 滋 プロフィール

返還しないための「大義名分」作り?

市民の声を受けて、相模原市はたびたび返還を要求してきた。そして日米協議の結果、2014年にはJR相模原駅の北側約17ヘクタールが日本政府に返還された。このうち2ヘクタールを南北に走る道路用地に充て、相模総合補給廠によって南北に分断されていた市街地がやっと結ばれることになった。

返還された土地に隣接する北側の約35ヘクタールは2015年から共同使用が開始され、このうち日本側の10ヘクタールではスポーツ・レクレーションゾーンの開発が始まっている。

 

これで終わったわけではない。相模原市と相模原市議や市民でつくる相模原市米軍基地返還促進等市民協議会は、日本政府を通じて米軍にさらなる返還を求めている。

そのターゲットになっているのが相模総合補給廠の北側33ヘクタールである。今回、第38防空砲兵旅団司令部が入った庁舎に隣接する土地にあたり、仮に返還されれば、司令部庁舎やヘリポートがむき出しになる。

相模原市の返還要求は、この土地にとどまらない。日米共同使用となった35ヘクタールの土地全部と、JR横浜線に沿った東西に長い道路用地の返還も求めている。

返還が実現すれば、相模総合補給廠は東側を除いた西・南・北の各側が道路や民間住宅に面することになる。日本人にとって不可侵だった米軍基地があちこちで削り取られるのだ。一方の米軍にとっては、「資産」の喪失以外の何ものでもない。

それでも米軍が返還の検討を余儀なくされているのは、日米地位協定に以下の条文があるからだ。

第2条 3  合衆国軍隊が使用する施設及び区域は、この協定の目的のため必要でなくなったときは、いつでも、日本国に返還しなければならない。合衆国は、施設及び区域の必要性を前記の返還を目的としてたえず検討することに同意する。

不要になった米軍施設は返還しなければならず、たえず返還も検討しなければならないという条文がある以上、米軍は返還要求を無視するわけにはいかない。

見てきた通り、相模総合補給廠は遊休化し、返還の協議に応じなければならない状態にある。そこへ突然、戦闘部隊の第38防空砲兵旅団司令部がやってきたのだ。既存の第35戦闘維持支援大隊を追い出し、相模総合補給廠の主となったのだから、そのこと自体に重要な意味があるはずである。

防衛省に今回の玉突き移転の理由を聞いても「米軍の運用上の問題には答えらない」の一点張り。ここは推測するしかないが、「秘密保持が欠かせない戦闘部隊が常駐を始めた」ことを理由に、「これ以上の基地返還の要求には応じられない」との「大義名分」をつくることに最大の狙いがあるのではないだろうか。

今後の相模総合補給廠について、米陸軍は次のように説明している。

「第38防空砲兵旅団司令部は、相模総合補給廠の既存の施設を使う。これは司令部のみであり、現時点で、日本に追加の装備は導入しない」

装備=武器類の追加がなければ「他に新設される部隊はない」ということになるが、米側はあくまで「現時点で」と言っている。前出の金子市議は「さらに大きな部隊が来るのか来ないのか、現状では分からない」といい、先は見通せない。

日米安全保障条約第6条は、日本政府に「基地提供の義務」を定めている。米軍は基地の「必要性」さえ示せば、半永久的に基地の提供を受けることができる。

米軍による事実上の日本占領は、今も続いているのだ。