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本庶佑教授が22年かけて実用化したオプジーポ開発の「苦節」

「インチキ治療」と言われたことも…

発売当初は「1か月の薬代がプリウスの値段と同じ」という高額薬価で話題になったがん治療薬・オプジーボ。

この薬の基になる作用原理を発見した京都大学高等研究院の本庶佑(ほんじょ・たすく)特別教授(76)が今年のノーベル医学生理学賞の受賞者の一人に選ばれたことで、再び話題の種になっている。

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既に2014年9月のオプジーボ発売以降、同種の薬剤は4種類登場し、市場は激戦状態だ。オプジーボは発売直後、日本史上最高薬価だったこともあり、保険財政を破綻させるとまで言われたが、その後の制度改正などでこの価格も劇的に下がった。

授賞式を1カ月後に控えた今、この薬の起源から現在まで、そして今後どうなるのかを俯瞰する。

 

がんと免疫の関係

そもそも本庶特別教授のノーベル受賞理由は「免疫チェックポイント阻害因子の発見とがん治療への応用」である。より簡単に言えば「がんに対してヒトの免疫がなぜ効果を発揮しないかを明らかにした」というものだ。

それまでがん細胞とヒトの免疫の関係については、謎だらけだった。がん細胞はヒトの体内では異物にあたるため、免疫が正常に機能するならば、最終的にがん細胞は体内から排除されるはずだった。

しかし、最終的にヒトの免疫機能ががん細胞に敗北するのは、現在日本人の死因の第1位が悪性新生物(がん)であることからも明らかである。

1992年、本庶特別教授らは、体内の異物を攻撃する免疫細胞の表面で「PD-1」という分子を発見した。

発見当初、この分子がどのような役割を果たすかは全く不明だったが、後に本庶特別教授らは、この分子が免疫が過剰に働いて人体そのものを攻撃することを抑える免疫のブレーキの役割があることを突き止める。このPD-1のような働きをする分子は現在複数見つかっており、まとめて「免疫チェックポイント分子」と呼ばれる。

一方、がん細胞はその表面に「PD-L1」という分子を作り、これがPD-1と結合することで、免疫細胞のブレーキの役割が作動し始め、それ以後がん細胞への攻撃が止まってしまうという事実も明らかになった。つまりこのPD-1とPD-L1の結合を防ぐことができればがんの有力な治療法になるという仮説が生まれた。