「密約」はあったのか? 桑田と清原「涙のドラフト会議」を語ろう

「プロ野球最大のミステリー」の真実
週刊現代 プロフィール

城島 では、実際に西武はどのように動いたのでしょうか?

私は当時のKKドラフトを取材していた記者たちに取材をして原稿にまとめたことがあるのですが、当時の夕刊フジの記者は、ドラフトの数日前、根本さんから「西武は清原を指名する」と聞かされたそうです。

記者が「巨人とかぶっちゃいますね」と返すと、根本さんは「いや、巨人とはぶつからないよ」と含み笑いをし「それとね、桑田は早稲田には行かないよ」と続けたといいます。

坂井 西武の本命が、最初から清原だったのは本当です。まだ発足から日の浅い球団でしたから、人気でも実力でもチームの中心となる選手が欲しかった。それは、清原をおいて他にいなかった。

先程も言いましたが、最悪のシナリオは巨人が清原を1位指名し、桑田とのW獲りをすること。

我々にできるのは、どちらを1位指名するのか決めかねて他球団の出方を探っているであろう巨人をミスリードし、巨人が桑田を1位指名する確率を少しでも引き上げることでした。そこで、一芝居打つことにしたのです。

ドラフト2日前の球団のスカウト会議で、私はあえて「西武は桑田を指名する」と明言しました。「清原を獲りに行っても、抽選で8分の1になるかもしれない。それなら、桑田指名に賭けよう」。

スカウト部長には「業界に西武は桑田で行くと触れ回ってくれ」と命じました。私の意図を察したのでしょう。根本さんはニヤリとしていた。

城島 つまり、巨人としてはドラフト前日に「西武は桑田1位指名」の情報を得て、強行指名の可能性を恐れ、桑田のドラフト外での獲得という目論見を撤回せざるをえなくなった。

 

桑田も心で泣いていた

得津 なるほど、そういう可能性もあるか。清原と桑田、どちらかを1位に選ぶのであれば、確実に複数球団競合になる清原か、西武と一対一あるいは単独で獲れる桑田か、という選択肢になる。

巨人の最終的な指名は、ドラフト当日の朝に決まります。グランドパレスに正力亨オーナーが直々に来て「御前会議」が開かれる。おそらくその場で「じゃあ桑田で行こう」ということになったのだと思います。

その瞬間まで、清原と桑田のどちらを1位指名で行くのかは確定しない。つまり、巨人と桑田周辺の間に何らかの「約束」はあったにしろ、世間で言われるほどの謀略めいた話ではなかったのではないか、というのが私の見立てです。

城島 前出の夕刊フジの記者も、後に王監督から「密約なんてものはなかった。競合覚悟で清原を指名すると決めていたが、ドラフト会議当日の朝に桑田が1位指名なら入団するという情報がスカウトから入ったんだ」と聞かされたそうです。

どこに真実があるのかはわかりませんが、桑田はドラフト会議4日後に予定されていた早稲田の推薦入試を受けず、巨人への入団を表明することになります。