高倉健、菅原文太…、70年代のスターたちはなぜ魅力的だったのか

鶴田浩二、三國連太郎 、田宮二郎ほか
週刊現代 プロフィール

殺気と悲哀がにじむ

田宮と同じく、役柄に没入した俳優として印象深いのが、三國連太郎('13年没、享年90)だ。
30代で出演した映画『異母兄弟』で実年齢よりも老齢の元軍人を演じるために、前歯を全部抜いたという有名なエピソードは、三國の役作りにかける狂おしいまでの熱量をあらわしている。

「私のなかでは、連ちゃんは他の追随を許さない『名優中の名優』。陰のある、愁いのある役をやらせたら天下一品です。

とりわけ良いのが飯を食うときの表情、口の動かし方ですね。彼はこれが抜群にうまい。腹を空かせて口の周りを飯粒だらけにしてがっつく姿。これは本当に飢えた経験のない役者には真似できない」(前出・日下部氏)

'70年代はまだ、時代劇も元気だった。時代劇の華といえばやはり殺陣だが、その技量において「最高の達人」と評されていたのが若山富三郎('92年没、享年62)だ。

前出の中島氏が言う。
「若山さんはあらゆるジャンルで主役から脇役までを演じましたが、やはり最大の魅力は殺陣での見事な剣さばきです。実弟の勝新太郎さんもうまかったけど、立ち回りに関しては、若山さんのほうが数段上でしたね」

若山主演、勝のプロデュースで制作された映画『子連れ狼』シリーズでは、全身から殺気をにじませる佇まいとダイナミックな殺陣で「一刀の若山か、若山の一刀か」とまで言われた。

 

いっぽうで、味のある演技も得意だった。大岡昇平の小説を基にした法廷ドラマ『事件』(NHK)では、人情味あふれる弁護士を好演した。

若山を師と仰ぐ俳優・千葉真一氏が言う。
「法廷でボロボロになるまで戦ったあと、近くの飯屋でしみじみ飯を食うシーンがあるんだけど、先生が『今日も一日終わったな。ああ、飯がうまいな』ってこぼすだけで、人生の悲哀がにじみ出る。シリアスな芝居もうまい人でした」

経済も社会も上り坂、日本が一番輝いていた時代だったからこそ、「土の匂い」を漂わせた彼らの佇まいはいっそう眩しく見えていた。

発売中の週刊現代では、さらに成田三樹夫、神山繁、金子信雄、佐藤慶、竹脇無我、石立鉄男、勝新太郎、横山やすし他「何も言わず人生を見せてくれた男たち」「またどこかで会いたい」忘れがたきスターの特集を掲載している。

「週刊現代」2018年11月24日号より

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