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高倉健、菅原文太…、70年代のスターたちはなぜ魅力的だったのか

鶴田浩二、三國連太郎 、田宮二郎ほか

あの頃、ブラウン管や銀幕の向こうにいたスターたちは、今では考えられないほど眩しい存在だった。本日発売の週刊現代では酸いも甘いも嚙み分けた彼らの魅力について特集している。

土の匂いがする男たち

昭和のスター俳優には、演技にも表情にも、えも言われぬ味わいがあった。それはきっと、地を這うようにして戦火をくぐり抜け、戦後の何もない時代を演技力ひとつで生き抜いてきた意地と胆力、たとえるならば、「土の匂い」のようなものを漂わせていたからだろう。

鶴田浩二('87年没、享年62)も、そんなスターの一人だった。
「演技のうまさで鶴さんの右に出る人はいなかった。器用すぎるほど器用。どんな役でもこなせる人でした」(映画プロデューサーの日下部五朗氏)

鶴田の真骨頂が発揮されたのが'76年からNHKで放送されたドラマ『男たちの旅路』だ。鶴田の役どころは特攻隊の生き残りのガードマン・吉岡。水谷豊や森田健作ら戦後生まれの後輩との衝突と和解を、エネルギッシュに演じてみせた。

「吉岡は『俺は若者が大嫌いだ』と公言する頑固オヤジだから、後輩たちも不満を感じる。だけど、吉岡の厳しくも筋の通った人間性にだんだん心ひかれていく。鶴田さんならではの役でした」(ドラマ評論家の古崎康成氏)

その第1話で、鶴田は部下に対してうつむきがちにこう問いかける。
「明日、確実に死ぬと決まった人間たちと暮らしたことがあるか」

戦争中、実際に整備工として多くの特攻兵を見送った鶴田だからこそのリアリティが滲んでいた。

卓越した演技力において、鶴田と並び称されるのが佐分利信('82年没、享年73)だ。戦前からすでに二枚目映画スターとして活躍していた佐分利は、独特のしゃがれ声と味のある演技を武器に'70年代にはテレビでも広く活躍する。

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映画監督で評論家の樋口尚文氏が、その魅力を力説する。

「佐分利さんの姿からは、今はもう存在しない厳かなダンディズムが漂っていた。なんと言っても、井上靖原作のドラマ『化石』(フジテレビ系)での演技は圧巻。晩年、死を意識した男性の迷いや希望を、少ないセリフで絶妙に表現していました」

佐分利の演技に対する自負は人一倍だった。映画監督の中島貞夫氏が回想する。

「同じ演技巧者の鶴さんのことはすごく意識していて、共演すると『このシーンは鶴田を立てているな。ちょっと違うのではないか』と佐分利さんが文句をつけてくる(笑)。監督も務めた人ですから、こちらの演出意図がまる分かりなんです」

佐分利は映画版『華麗なる一族』で野心家の銀行頭取・万俵大介を演じているが、この作品のドラマ版(テレビ朝日系)で同役を演じたのが山村聰('00年没、享年90)だ。

神戸一高、東京帝大を卒業したインテリで英語も堪能、知性と風格を兼ね備えた居住まいに重役や司令官など重厚な役どころがよくマッチした。

山村が矢部警視役を演じた刑事ドラマ『非情のライセンス』(テレビ朝日系)に、名シーンがある。

爆弾がしかけられた車の中で身体を縛られた矢部を、部下の会田刑事(天知茂)が救いに駆けつける。爆発が迫るなか、なんとか救い出そうと焦り動転する会田を矢部が突き飛ばし、「頼むぞ、会田」と嚙んで含めるように言い、ひとりで爆死する。

現実離れしていて、ともすれば滑稽にもうつる場面だが、死を前にしても落ち着き払い、天知の眼をじっと見つめて言葉を発する山村の演技に思わず涙を誘われる。