2018年10月31日、NYで会見した青野氏 photo by KAZUSHI UDAGAWA

サイボウズ青野社長が、わざわざNYで「夫婦別姓」導入を訴えた理由

自身も「別姓婚」の著者が検証する
グループソフトウェア開発会社「サイボウズ」の青野慶久社長が、10月31日にアメリカのニューヨークで「選択制夫婦別姓」について記者会見を開いた。青野社長を含む男女4人は、結婚時に夫婦別姓を選べない戸籍法は憲法に違反するとして「ニュー選択的夫婦別姓訴訟」と呼ぶ訴訟を起こしている。

2018年4月には東京地裁での第一回口頭弁論が開かれ、現在訴訟中のいま、青野社長がNYで会見を開いたのはなぜか。そしてアメリカでの「夫婦別姓」はどのようなものなのか。NY在住で、日本でもアメリカでも夫婦別姓婚を選択しているライター、黒部エリ氏が自身の体験を踏まえて検証する。
 

夫婦別姓が当然のアメリカだから

青野社長は2001年に結婚した際に、妻の姓に改姓。それに伴ってさまざまな手続き変更の苦労が起きたという。
 
海外での出張でも、青野の名前で予約をされると、パスポートの名前と違うのでと宿泊できない。自分が「青野」である証明を見せるために、常に昔のパスポートと、現在のパスポートを両方持ち歩いていると、二つのパスポートを掲げてみせた。

仕事をしている名前でホテルを予約すると、チェックインできないことも… photo by KAZUSHI UDAGAWA

青野氏は、2015年に民法750条は女性差別であるとして国を訴えた別の訴訟で、「夫婦同姓は合憲」という判決が下ったことを受け、2018年1月に作花弁護士と共に「戸籍法」に焦点を絞って、国に対して訴訟を起こした。そして「子どもの頃から使い慣れた名前を使い続けられる社会にしたい」と訴えている。

そもそも、なぜニューヨークで記者会見をしたのか。その問いに青野社長はこう答えた。

「夫婦別姓が当然のこととして可能になっているアメリカで、いかに日本だけ周回遅れなのか、外圧をかけていただきたいという思いもある」
 
「現在、同姓が強制されているのは、日本とジャマイカくらい」と青野氏は言うが、確かに選択制別姓が認められていない国は、世界でも多くはない。
 
ちなみに、青野氏は本来民法改正による夫婦別姓を希望しながらも、せめて「呼称上の氏」だけでもと戸籍法の改正を訴えている。今回は民法での訴訟と戸籍法での訴訟との議論とは一線を画したいと思う。  

外国籍の相手とは日本も「夫婦別姓」可能

じつは私自身は、「日本で」夫婦別姓婚を選択できている。なぜなら夫がアメリカ人という外国籍の人間だからだ。
 
結婚する時には、すでに社会人として銀行口座やクレジットカードや不動産を持っていたので、これをすべて書き換えるのはたいへんで避けたい、できれば別姓でいたいと考えた。そして日本の戸籍法では、相手が外国人であり、日本に帰化していない限り、それが可能なのである。
 
外国籍の配偶者がいる場合は、ひとり戸籍という形になって、そこに配偶者名を書き添えるだけで済む。日本人同士であれば、必ずどちらかの姓に統一しなくてはいけないのに、なぜか外国籍のパートナーと結婚するほうが便利にできているのだ。
 
ちなみにアメリカに「戸籍」というものは存在しない。戸籍制度があるのは、世界でも日本、韓国、台湾などくらいで、世界には戸籍が存在しない国が多いのだが、それでも「ファミリー」は確実に存在している。
 
アメリカにおいても、私は夫婦別姓を選んでいる。私は夫の姓をネイティブと同じには発音できないし、自分の文化的背景は日本人なのだから、慣れ親しんだ苗字がいいと思ったからだ。同姓を強要されることもないので、相手に自分の姓を名乗らせるという選択もしないで済んだ。