大陸の生みの親は海だった!西之島から見えてきた大陸形成メカニズム

地球科学の「ニワトリとタマゴ」問題
中島 淳一 プロフィール

初期地球の大陸形成の再現か?

西之島で安山岩質マグマが噴出するということは、西之島下の地殻は大陸のように厚いのかもしれません。地殻が厚ければ、安山岩質マグマが噴出するのはマグマが上昇過程で結晶分化作用を受けたため、と説明することができます。

しかし、伊豆・小笠原諸島に沿って行われた地下構造探査実験によれば、西之島を含む伊豆・小笠原諸島南部の島々の下では地殻の厚さは15~20kmとわかっています。伊豆諸島北部(地殻の厚さは約30km)に比べてむしろ地殻が薄いのです。

つまり、地殻が薄い西之島で安山岩質マグマ、地殻の厚い伊豆諸島北部(伊豆大島や三宅島、八丈島など)で玄武岩質マグマが噴出しているということです。従来の定説とは逆の関係です。

同様の関係は、伊豆・小笠原諸島と同じ海洋島弧(島弧とはプレート沈み込み帯に形成される島の列の総称)であるアリューシャン列島でも確認されました。この2つの領域での観測結果から、海洋島弧においては、

・地殻の厚い地域(厚さ30km以上)では玄武岩質マグマが噴出する
・地殻の薄い地域(厚さ30km未満)では安山岩質マグマが噴出する

という関係がある、と言えそうです。

では、なぜ海洋島弧で安山岩質マグマが噴出するのでしょうか?

かんらん岩の融解に関する岩石学的実験では、融解時の圧力が高いと玄武岩質マグマ、低いと安山岩質マグマが生成することが示唆されていました。

かんらん岩:マグマが冷えたて固まった火成岩の一種で、SiO2に乏しい

地球内部の圧力は、その上にある岩石の自重で決まり、深い場所ほど圧力は高くなります。

西之島周辺では地殻が薄いため、マントルは比較的浅いところまで達しています。浅いマントルは圧力が低いため、そこでかんらん岩が融解すると、安山岩質マグマが生成されると考えられます。

【図】地殻とマグマの関係
  厚い地殻から玄武岩質マグマが、薄い地殻から安山岩質マグマができるしくみ

薄い海洋地殻で覆われていた初期地球では、海洋プレート同士の境界で起こった沈み込みにより、海洋島弧がまず生成されたことでしょう。海洋島弧での多量の安山岩質マグマの噴出により、大陸が急激に成長したのかもしれません。

「大陸は海から誕生した」と考えれば、「ニワトリとタマゴの問題」は解決できます。

初期地球では、生命にとって有害な紫外線や荷電粒子が降り注いでいたため、生命が存在できるのは海の中だけでした。有機分子(アミノ酸、核酸、炭化水素など)が豊富で、紫外線などにさらされない原始海洋で、生命は誕生したと考えられています。

初期の生命を育み、単細胞生物を多細胞生物へと進化させた海は、じつは大陸の生みの親でもあるのです。人類を含め現在の地球上にいるすべての動物・植物にとって、まさに「母なる海」と言えるでしょう。
(本コラムは海洋研究開発機構プレスリリース(2016年9月27日)を参考にしました)

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