大陸の生みの親は海だった!西之島から見えてきた大陸形成メカニズム

地球科学の「ニワトリとタマゴ」問題
中島 淳一 プロフィール

大陸地殻とは?

ここで、大陸と海洋の違いをおさらいしましょう。みなさんは、海水面よりも高い場所が大陸で、低いところに水が溜まって海洋をつくっていると思っていませんか? これは大きな間違いです。大陸と海洋は単なる地表の凸凹ではないのです。

地球の内部は地殻・マントル・核という構成物質の異なる3層からなり、これは大陸の下も海洋の下も共通です。

大陸と海洋で異なるのは、もっとも外側の層「地殻」の組成です。大陸地殻は地域により厚さが20~70kmの幅があり、平均的な組成は安山岩です。一方、海洋地殻は厚さがほぼ一様(約7km)で、安山岩よりも密度が大きい玄武岩で構成されています。

ところで、マグマオーシャンが固化してできた原始地殻は、おもに玄武岩からなる薄い海洋地殻でした。つまり、初期の地球には海洋地殻しかなかったのです。すでに述べたとおり、そのタイミングはまだよくわかっていませんが、何らかのメカニズムにより安山岩からなる大陸地殻が形成されたことは間違いありません。

では、陸地殻はどのように形成されたのでしょうか?

【図】地球の構造と地殻
  地球の構造と大陸地殻、海洋地殻 illustration "EARTH STRUCTURE" by gettyimages

最初の大陸地殻はどうできた?

東北地方のようなプレート沈み込み帯ではまず、高温のマントルウェッジ(沈み込むプレート上のくさび状のマントル)で玄武岩質マグマが生成されます。その玄武岩質マグマはマントルウェッジ内の上昇流やマグマ自身の浮力により上昇し、地殻とマントルの境界(密度境界)であるモホ面直下に集積します。

密度の大きな玄武岩質マグマはそのままでは地殻内を上昇できませんが、結晶分化作用(温度低下による鉱物の結晶化でマグマの化学的性質が変化すること)を受けることで、重い鉱物がマグマ溜まりの底に沈殿してゆきます。

それによって、メルト(マグマの液相)のSiO2量が増えてゆき、玄武岩質マグマは次第に安山岩質マグマに変化します。

これまでの研究により、日本列島などのプレート沈み込み帯に分布する火山の多くは安山岩質マグマを噴出することがわかっています。

一方で、フィリピン海プレート上に位置する伊豆大島や三宅島、八丈島などの火山島の多くは玄武岩質マグマを噴出します。海嶺やホットスポット(代表例はハワイ)などの海洋プレート上で噴出するマグマも玄武岩質です。

このことから、地殻が薄い海洋プレートで噴出するマグマは玄武岩質マグマである、と考えられていました。

ここで不思議なことに気がつきませんか?

安山岩質マグマが生成されるためには、大陸地殻内で結晶分化作用を受ける必要があります。つまり、安山岩質マグマを作るには、厚い地殻が必要なのです。一方、安山岩質マグマが作られないと大陸地殻は成長しません。

「ニワトリが先かタマゴが先か」のような問題です。大陸地殻の形成・成長は地球科学者を長年悩ませてきた謎でした。

この大陸形成の謎を解く鍵が西之島にありました.ここで西之島に話を戻し、その特徴をみていきましょう。

【表】大陸・海洋と地殻、マグマの関係
  大陸・海洋と地殻、マグマの関係

西之島で噴出するマグマは…

有史以降、西之島では噴火の記録はありませんでしたが、1973年5月に島の南東約600mの海底で噴火が始まり、12月には「西之島新島」が形成されました。この海底噴火によりいくつかの島が形成され、翌年6月には新島と旧島が陸続きになりました。

2013年11月に西之島の南南東500mで海底噴火が始まり、新しい島が出現したのは記憶に新しいですね。その後も活発な噴火活動が続き、12月後半には新しい島は西之島と繋がりました。2015年8月にいったん沈静化したかにみえた噴火活動は、2017年4月から再び活発になり、現在までに島の面積は2013年の活動開始前の約9倍に拡大しました。

2018年11月現在、噴火活動は休止していますが、火山ガスの放出は続いていることから、再び噴火が始まる可能性が指摘されています。

西之島が重要な意味をもつのは、1973~1974年および2013年以降の噴火ともに噴出したマグマが安山岩質だという点です。通常、薄い海洋プレート上で噴出するのは玄武岩質マグマです。実際、伊豆諸島北部の伊豆大島や三宅島などでは玄武岩質マグマが地表に噴出しますが、その南方約800kmにある西之島では安山岩質マグマが噴出するのです。なぜなのでしょうか?