# フェイクニュース

「右寄りアカウント」フォロワーの大半はボットとサイボーグの可能性

日本でもネット世論操作が行われている
一田 和樹 プロフィール

日本で行われるブロッキングにも注意が必要だ。2018年4月13日、政府の知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議は海賊版サイト(ここで対象となったサイトは漫画村、Anitube、MioMioの3つ)への対処としてブロッキングを民間事業者に求めた。表現上は自主的と言っているが実質的には要請と言える。NTTグループ4社がこの要請に応じる発表を行った。

ブロッキングは特定のサイトへのアクセスを遮断する方法で通信秘密を侵す=憲法違反となる可能性が高いと指摘されている。また根拠となっている被害の規模や範囲の根拠になっているのは被害者である出版社側の説明だが、反論も多く確定しているとは言いがたい。対策も他の選択肢がある。つまり、被害状況も対策も充分に検討されたとは言えない。

 

人々を具体的な行動に駆り立てる

こうしたフェイクニュースに対して耐性が低い環境の下、一般の人々が、トロールの書き込みやフェイクニュースに反応し、自分からウソを発信したり、ヘイトデモに参加したり「デマサイトへの寄付」を行ったりと具体的な行動に出る可能性は大いにある。実際にそうした行動も観察されている。

ツイッター社はロシアが同社のサービスを利用してアメリカの大統領選に干渉したことを認めており、2018年10月17日にロシアのIRA(Internet Research Agency、SNS上での世論操作を行う組織)に繋がるアカウント3841件と、それ以外770件のアカウント、およびそれらのアカウントの1000万件以上のツイートと200万件以上の画像やビデオを公開した。

同社はこれに先だっていくつかの組織にデータを渡していた。そのひとつであるアメリカのシンクタンク大西洋評議会のDFRLabは『#TrollTracker: Twitter Troll Farm Archives』というツイッターのデータを解析した結果の記事をすぐに公開した。

タイミング的にこの調査結果を『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』に反映することができなかったが、そこでの結論と拙著の分析はほぼ同じだった。ネット世論操作において、もっとも危険なのはトロールそのものよりも、トロールが一般の人々を焚きつけ、動かすことである。

過激な主張やヘイトスピーチや陰謀論で世論を分断するような一般人のサイトやSNSの投稿をボットやトロールが拡散することでアクセスが増加し、広告や会費、販売あるいは寄付などの収入も増加する。そうするとその一般人はより熱心に発言するようになってゆく。

日本においても同様に保守系のサイトが広告収入や寄付などを得ていることがわかっており、ヘイトスピーチや右寄りのサイトがアクセスを集めて広告収入や寄付や会費を得ることにもつながっている。

扇動し、マネタイズすることで…

右派の論客としてデビューした古谷経衡氏は、自身の経験から右派のライターとして活動する方が左派で活動するよりもフォロワーを獲得しやすいと説明している(『信者を集めて年収1千万? カルト化するネトウヨ商売の闇』(2018年7月12日、文春オンライン)。

さらにそのうえでなんらかの権威付け(テレビ出演、著書の刊行など)を行ってファンを組織化して囲い込み、会費を徴収するのが典型的なビジネスモデルだという(もっとも古谷経衡氏自身はそちらの方向には向かっていないようだが)。

取り巻きを集めてサークルを主催し、囲い込んで集金をする。数千人の取り巻きがいれば会員組織による集金や書籍の販売などでかなり潤ってくる。

そしてそれを可能にしているのは、ボットやトロールによる拡散と誘導、正しい判断ができなくなる情報遮断、政府によるウソの容認や改竄や「攻撃してよい」雰囲気作りなのだ。

以上見てきたように日本国内でネット世論操作が行われている可能性は高い。構築されたエコシステムはロシアがアメリカで仕掛けた攻撃の仕組みに酷似している。日本の現政権与党がそれを模して行っている可能性やロシアあるいは他の国が仕掛けていることも考えられる。

はっきりしているのは現在の日本には、それを確認するための方法論や組織、体制が全くと言ってよいほどにないことだ(仕掛けているのが現政権与党であれば、そこにはあるのかもしれないが)。