80代母の怪我で知る、介護保険「徴収増額」の厳しすぎる現実

日本は老後の面倒をみてくれない国
すずき まゆみ

建物の立派さよりも「理念」「人」

では、よい施設を見抜くにはどうしたら? 「繰り返しますが、高齢者施設は『人徳産業』です。施設を見に行く前にHPがあればそこの運営の理論やスタンスを調べることが大切です。また、働く人が大切にされているかどうかもポイントです。先ほど言ったように、施設は人がなにより大切。働く側がストレスを貯めているような場所で悲しい事件もありましたし」

ちなみにオヤノコトネットでは、原則として相談料5000円かかるが(会員登録すると初回は無料)、高齢者施設の相談や紹介、さらに専門家による施設見学同行なども行なっているそうだ。いざ決めるとき、契約に立ち会ってくれたりもするらしい。

オヤノコトネットで紹介していたこの施設は、職員のための保育所が隣接しており、子どもたちと入所している人たちとの交流もあるという 「オヤノコトnet」より

そもそもお金や介護についてなど、親子でも、いや親子だからこそ話しにくいものだ。が、第三者が間に入ってくれたなら、ビジネスライクに互いの希望を伝え合えるかもしれない。とくに親世代には、「専門家」の名刺は有効な気がする。

最後に、あらかじめ知っておくとよい情報として、大澤さんは「地域包括支援センター」の存在を教えてくれた。2006年からスタートした「地域の高齢者の総合相談窓口」で、地域高齢者やその家族の相談をワンストップで受け、必要なサービスにつなげてくれるというものだ。全国の自治体に設置されており、学校とほぼ同じ数だけある。

 

地域の窓口は「担当者」次第

「ここを上手に利用できれば、介護予防の情報を収集できたり、介護そのものの詳しい情報を得ることもできます。いざ介護が始まったときにも慌てることなく対応ができます」

ただし、介護についてのの相談がメインなので、親がシャッキリと元気なうちはあまり幅広い情報を収集することは出来ないらしい。「というより、担当者による部分が大きいんですよね。熱心な担当者に当たれば、介護未満の段階でも役立つ情報が得られるかもしれません。でも、基本的には民間企業の情報(お役立ちグッズやサービス)はあまり持っていないし、多大な期待はしないほうがよいでしょう」

しかし、それでも、いざというとき速やかに訪れることができるように、どこにあるかくらいはおさえておくとよいだろう。また、そこにはたいてい、自治体が出している「高齢者の手引き」などの資料が置いてあるので、それをもらってくるだけでもいい、と言う。自治体にもよるが、たとえば車椅子の貸し出しやゴミ収集のサービスなどをおこなっているところもあるのだそうだ。

もしかしたら、いますぐに利用できるサービスがあるかもしれない。「遠距離の親であれば、帰省した際にでも行ってみるといいですよ」と、大澤さん。わたしも近いうちに時間を見つけ、足を運んでみることにした。

家に帰ってからわたしは、母の救急車騒動の顛末と、大澤さんに聞いた話を全部、きょうだいにメールした。

これまで「長女だから」と、なんとなくわたしが責任をもつつもりでいた。しかし、大澤さんの話を聞いて、親のことは1人で担えるものではないとわかった。「親のこと」は、きょうだいみんなで考えたい。

大澤さんも「きょうだいで情報共有しておくことは大切」と言う。きょうだい間の争いを見聞きするケースは山ほどあり、その多くは介護が始まる前から情報を共有し、意志を統一しておくことで防げる可能性もあるからだ。

「きょうだいがいる場合は、誰かリーダーを決めておくとよいですね。そして、役割分担をする。それぞれの生活スタイルや能力に応じて、お金を出す人、マンパワーで助ける人、情報を集める人、といった具合に」

そうか、では、まずは、第一回会合だ。さっそく「みんなで一度、集まろう」と提案。幸いにもみんな、わたしの提案を快く承諾してくれ、それぞれの配偶者を含めて集まることが決まった。いよいよここから、わが家の「親のこと」が始まる。