施設を一緒に探すことですら、ハードルが高い場合がある Photo by iStock

80代母の怪我で知る、介護保険「徴収増額」の厳しすぎる現実

日本は老後の面倒をみてくれない国

80歳の母が頭から転んで救急車

夕食後、自宅でただぼんやりとくつろいでいた午後9時。携帯電話が鳴り、出てみると救急隊からで、1人暮らしをしている80歳の母がけがをした、と言う。近所のコンビニの前でふらついて転び、たまたま近くにいた人が救急車を呼んでくれたのだそうだ。

「鼻から血が出ているので、外科で受け付けてくれる病院を探しています。決まりましたらもう一度、連絡します。すぐ来られますか?」。

病院に駆けつけると、母はすでに診察室の中にいた。転ぶときに手をつくことができず顔を打ったので、念のため頭部CTを撮っていると言う。ふらついた原因を探るため、血液検査もするらしい。

幸いにも脳内に出血はなく、血液検査の結果もとくに問題なし、骨折はなかった。鼻の下に切り傷、おデコにたんこぶができただけですんだ母を、わたしはタクシーで母の家まで連れて帰った。

内閣府の調査では、介護保険制度における要介護又は要支援の認定を受けた人は2016年度末で591.8万人。2003年度末の370.4万人から221.4万人も増加している。そして要介護者を介護しているのは6割が同居する家族で、その7割近くが60歳以上だという。

現在52歳で80歳になった母親がいるライターのすずきさんは、頭の中でなんとなく親の介護のことを考えながらも日々の生活にかまけて放置していた。しかし、考えなくてはならない時が目前に迫ってきたのだ。
 

「いつかは親の介護」とは思っていたが

母は80歳、都内の戸建てで1人暮らしをしている。年齢の割に元気で、週に3回は趣味の場に出かけたり友だちと会ったりしているという母に、わたしは安心していた。

もちろん、いつまでもこのままで大丈夫だと思っていたわけではない。いつか母が倒れる日が来るかも、いつか1人暮らしができなく日が来るかも、と気にはしていた。しかし、日々の忙しさにかまけて、「その日」を考えることを先延ばしにしていたのだ。

しかし、「その日」は突然、やってくる。母の場合、今回は空振りで済んだが、転んで骨折、そのまま寝たきり、などという話はいくらでも聞く。救急車騒ぎで、「その日」がいよいよリアルなものとなり、わたしは慌てた。

そこで訪れたのが、株式会社オヤノコトネットだ。現在70〜80代の親と40〜50代の子どもの「オトナ親子」のために、情報提供・課題解決を行なっている。

「親のこと」を相談できる場所がない

代表の大澤尚宏さんは、広告・マーケティングプロデューサーの経験を活かし、身体障害者の生活情報誌を創刊し、その後大手企業や官庁からバリアフリーについてのコンサルやプロモーションの仕事をしてきた。

「『介護以外にも、心配なことが増えてきた』という高齢期の親をもつ子世代にとって、困った時に頼りにできる場がない」と2008年に「オヤノコト.エキスポ」というイベントを開催。そこには、想定を超える2万人超の「オトナ親子」が訪れ、大盛況になったことから、潜在ニーズが大きいことを再認識し、「株式会社オヤノコトネット」を立ち上げた。

今では7000名を超える会員のいる「オヤノコト.net」の運営とセミナー、定期情報誌の出版などを行う。それを通じて多くの人の「親のこと相談」をリアルに聞いており、『そろそろはじめる親のこと』という著書も先日刊行している。

その大澤さん曰く、「親が元気なうちから備えておくことが何より大切」だと言う。「親は確実に年をとります。離れて暮らす親がいきなり要介護になり、何ひとつ準備していなかったために会社を辞めることになったり、離婚の危機に陥っていたりする人も少なくありません」

なるほど、と思う。今回、母はすぐに普通の生活に戻れたが、これが骨折していたらどうだったろう。しばらくは入院するにしても、退院してから1人暮らしができるのか。少なくとも、これまでどおりというわけにはいかないだろう。いきなり「どうするか」を迫られる事態になっていたかもしれなかった。

困った人が相談できる明確な窓口がない。そう思ってオヤノコトネットを立ち上げたという大澤尚宏さん