画/おおさわゆう

医学部入試で差別されてきたことが明らかになった多浪生たちの悲哀

覆面ドクターのないしょ話 第39回
大学入試——志望校に入るためなら、浪人も辞さず——というのは決して珍しい話ではない。とはいえ、親のすねをかじりながらの浪人が許されるのはせいぜい2年までが一般的だろう。だが、3浪、4浪がごろごろいる学部がある——医学部だ。

イカ太郎(医科多浪)は疲れている!

今年度の医学部入試は注目を集めそうだ。

昨年度までの私立大学医学部の入試で、女子や多浪生が点数操作で不利に扱われていたことが、複数の大学で明らかになったからである。今回からいきなり女子や浪人生の合格率が上がるのは間違いない。

 

女子についてはさかんに議論されているので、今回は多浪生について書いてみたい。

まず素朴な疑問だが、多浪とは何浪以上をいうのであろうか? 私の友人に3浪はいたが、それ以上はいなかったので、個人的には4浪以上が多浪という印象を持っている。

希代のエンターテイナー、大橋巨泉氏が司会を務めた人気番組「クイズダービー」で、かつて次のようなクイズが出題された。

「受験に関する四字熟語で、現役偶然、1浪当然、2浪平然、3浪憮然などと言いますが、では、6浪は何然でしょう?」

読者の皆様、答えられますか?

答えは「慄然(りつぜん)」

私が受験の頃は予備校などでよく聞いたものだ。現役から10浪まであり、以下の通りである。

現役偶然、1浪当然、2浪平然、3浪憮然、4浪唖然、5浪愕然、6浪慄然、7浪呆然、8浪超然、9浪天然、10浪無為自然

受験に一番不利なのは現役生である。なぜなら高校の授業があるので、昼間は受験科目の勉強に集中できない。だから夜に予備校で勉強するのだ。よく「現役生は最後に伸びる」となどというが、それは勉強量の裏付けがあって言えること。現役生に保証されているのは18歳という若さだけだ。

現役生よりも浪人生の方が受験には有利だ。なぜなら高校の授業もなく、既に受験も経験していて、朝から受験科目だけに集中できて、昼間から予備校で勉強できるからだ。特に、気力・体力・学力的に最も充実しているのは一浪生だろう。

多浪生と一言にいうが、これには2種類ある

第1は、現役の時から受験し続け、偶然・当然・平然……もなく浪人のままでいる受験生のこと。

第2は、他の学部・大学・社会人を経験した後に入試を受けた「再受験組」の人たちである。

第1の多浪生だが、特に医学部を受験し続けている多浪生を「イカ太郎(医科多浪)」という。イカ太郎の中には、家が開業医で、どうしても医学部に合格しなければならない学生もいる。

イカ太郎は疲れている。勉強に、そして人生に……。4浪以上になるとその傾向が強くなるのではないだろうか?

就職活動で、入社試験を何度受けても落とされて就職先が決まらないと心が折れてしまう。イカ太郎も心が折れかかっている

当初は、患者さんを救い、医学に貢献したいという志を持っていた。だが浪人生活が続き、疲労が蓄積すると、イカ太郎にとっては、合格することのみが医学部受験の目的になってしまう

2浪を過ぎれば20歳になる。酒・タバコも法律上は許される。易きに流れる受験生を私も予備校で少なからず見てきた。

さて、読者の皆様、2015年ラグビーW杯イングランド大会で、日本チームが南アフリカを撃破して世界に衝撃を与えたことを覚えていらっしゃるだろうか?

注目を集めたのは、ゴールキックを何度も決めた五郎丸歩選手だった。その頃、医学部受験生たちの間でフォローされているブログに、ある有名人がいた。

彼のブログ上の名は、「五浪丸」君。つまり当時既に5浪中だったようだ。予備校に通っており、私立医学部を複数受験していた。なかなかのイケメンで、おしゃれなカフェで勉強したりしていて、とてもファッショナブルな若者だった。そして年度末の3月にブログは更新され、次のように書かれていた。

「この度、六浪丸になりました」

どうやら医学部には合格できなかったらしい。そしてさらに1年後……。

「七浪丸になりました」

というメッセージを残して、ブログは閉鎖された。もしかして、実家が病院で、彼は後継ぎだったのだろうか? 彼が多浪を続けざるを得ない理由があったのかもしれないが、7浪まで続けさせられる両親の経済力にも驚く。その後の彼の消息は杳として知れない。今頃どうしているのだろう?