子供をスマホゲー依存から守るために、親に伝えたい3つのアドバイス

息子がゲーム依存症になってしまった⑥
鈴木 優

「ほめる」「無視する」の合わせ技

そこで今回は、私が病院で教わったなかで、効果的と感じた子どもたちへの対応を3つほど紹介してみたい。

子どもに依存症の恐れがあるのなら、すぐにでも専門医にかかったほうがいいし、基本的には医師の指導の下で治療を行うべきだ。それでも、依存症になりそうなお子さんをもつ親御さんにとって、多少は参考になる部分があるかもしれない。特に子どもとの会話が少なくなってきた場合には有効だと思う。

 

1つめは、「ほめる/無視する」という対応だ

「そんなにゲームばかりやっていたら留年するよ。ちゃんと勉強しなさい」
「明日は学校なんだからもうゲームをやめて寝なさい。何を考えているの?」
「いつもゲームをやっているんだから、ご飯のときぐらいスマホをやめて」

などなど、子どもがスマホゲームばかりしていれば、小言を言ったり、叱ったり、ときには脅したりするのは親としてはごく自然な振る舞いだろう。ゲームが原因で実際に問題が起きているのなら、文句のひとつもいいたくなるものだ。親としての責任感もあるかもしれない。

子どもと一緒になって決めたルールを破ったなら、厳しく言うのは当然だ。しかし、相手の価値観を一方的に否定するような言動は、依存症の患者は聞き入れがたいという。繰り返せば反発し、話ができなくなってしまう恐れもある。

ストレスがたくさんあるなかで、好きなことを止めろと言われたらイヤな気持ちになるのは想像に難くない。特に、わかっちゃいるけどやめられないスマホゲーム依存症の患者では、なおさらその気持ちが強いようだ。それでも親としてはついつい言ってしまう。かくいう私もそうだった。

その結果、息子は私と話をするのを極力避けるようになっていた。一方、私は私で息子が無視を続け、また、時おり豹変したように始まる口論や暴力的な態度に疲れ始めていた。

依存症の患者がいる家庭はこうした状況に陥りやすく、長引くと出口が見えにくくなってしまう。その袋小路を避け、少しでもいい方向へと変えてゆくためには、まず話しができる環境をつくる必要がある。なぜなら、依存症の治療は対話を通じて行うのが基本だからだ。薬や手術では依存症はどうにもならない。この「ほめる/無視する」はそのための対応である。

人が依存症になるカギは「報酬」にあるという。報酬といってもお金ではなく、「楽しい」や「うれしい」など、自分にとって望ましい結果が得られることすべてだ。スマホゲーム依存になりやすいのは、その楽しさが本当に手近なところで簡単に得られるせいだが、逆に、ゲームから離れる方向の報酬を増やすのが、「ほめる/無視する」の目的だ。

具体的には、スマホゲームする時間を減らせたときはもちろん、ゲームに関係がないとしても、ささいなことでもほめること。

運動不足でメタボの息子なら、散歩に出たらほめ、食事を節制できたらほめ、病院に行けたらほめる。逆に食が細い子どもなら、しっかり食事ができたらほめるのでもいいという。朝起きてきただけでほめてもいいかもしれない。

高校生や大学生の子どもをその程度でほめるのはどうかと思われるかもしれないが、依存症の患者は本当に報酬が足りていないのだろう。小言や叱る言葉をぐっとこらえて、ほめる機会を増やしてみると、確かに息子と衝突する機会は少しずつながら確実に減っていった。

一方、無視するほうは、ゲーム依存が進むような望ましくないような行動をとったら、注意したり叱ったりするのではなくスルーするというやり方だ。普通に考えれば、そういうときは何かしら言ったほうがよさそうなものだけれど、小言をはじめ、叱られたり口論したりするのは、患者の報酬(「張り合い」といってもいいのかもしれない)になっている可能性があるという。

依存症の患者にとっていちばんつらいのは無視されること。つまり、報酬の対極にあるのが無視なのだ。これはすぐにはわからなかったが、実行してみたところ、かなり効果があると感じている。

たとえば、まだ大学に通っていたときに、月の途中でスマホのデータ通信量を使い切って、「通信量がなくなったから追加するまで今月は外出しない」と息子が言うことがあった。当然、そんな要求には応じたことはないから、ひと悶着あるのがいつものパターンだった。だが、このときに冷淡に「無視する」を試してみたところ、息子は何も言わずに学校へ行っていた。その後もデータ通信量について無視し続けたところ、息子は何も言わないようになっていた。

2つめは、親もゲームをやってみるというもの

病院で聞いたアドバイスのなかで、いちばん効果があったのがこれだった。子どもが依存するほど好きになる対象についてよく知ることは、スマホの使い方やお金のルールを決めるときに役立つし、何より息子とのコミュニケーションで効果はとても大きかった。

ただし注意点として、ゲームを否定するのではなく、普通に楽しむつもりで始めること。そして、わからないことや教えてほしいことがあれば、子どもに聞いてみるとけっこう喜んで話をするかもしれないという。

私はほとんどゲームをやったことがなかったから、自分がスマホゲームを始めることなど想像したこともなかった。でも、病気の原因であるゲームについて知ることは確かに必要なことかもしれない。そう考えて、ゲームをやろうと決めたのはいいが、はたと困ってしまった。息子はいったいどんなゲームをしているのだろうか。私には何もわからなかった。そこで息子に聞いてみた。

「そんなに楽しいものなら、私もスマホでゲームをしてみようと思うんだけれど、なんていうゲームをしているの?」
 
そう息子に聞いてみると、いつもとは打ってかわって、すぐに言葉が返ってきた。

「メインでやっているのは○○と××と△△の3つだよ。あとは余った時間にいくつかやっているものがある。けど、それはやったりやらなかったり。何、ゲームするの?」
「やってみようかなと思って。3つのなかでいちばん楽しいのはどれ?」
「○○は育成が楽しくて、××はいろんなキャラが魅力的で、△△は……」

それまでは何を言ってもほとんど無視していた息子が、流れるようにしゃべり始めた。

「余った時間」などというものがあるものかと少しカチンときたものの、小言はひとまず飲み込んで、息子にすすめられるままに私も始めてみた。

すると、ゲームをはじめ、「ガチャ」の仕組みもわかったし、ゲーム以外のことについても息子と話をする機会が増え始めた。息子にしてみれば、ゲームをやりすぎることが問題だとわかっていても、ゲームについて何も知らない人間にダメと言われ続けることに、頭ごなしに否定される感覚があったようだ。

また、息子がずっとゲームだけをしているわけではなく、ゲームについての動画やツイッターなどを見ていることもこのときに初めて知った。ゲームをやってみたら効果的だったという親御さんは「家族の会」にもとても多い。