東大・京大・早慶→一流企業のエリートが「日本ヤバイ」と言う理由

「出世」を求めるのはもうやめだ!
後嶋 隆一 プロフィール

私は何を目指していたのか?

「Hey Ryuichi, you are working for XX company, right? what will you do?
 (将来、会社に戻ったら何がしたいんだい?)」

MBAで切磋琢磨するクラスメートとの何気ない会話が発端だった。MBAプログラムの最初の学期の終盤、一番大きなマーケティングのプロジェクトをまとめ上げるために遅くまでミーティングルームで一緒に作業をしていた同じグループのアメリカ人からの問いかけだ。

 

「そう、俺は社費派遣で来ているからね、とりあえず会社には戻る。でも、残念ながら復帰後の仕事は決まってないんだ。おそらく事業戦略や営業企画なんかで組織を回すことが期待されていると思う。そういうの、将来的に会社を運営するには必要な経験なんだよね。まぁでも、端的に言えば、“何でも屋”だよね。ははは」

疲れからか、慣れからなのか、夜も10時を過ぎたころのあの妙な高揚感の中で、自分の置かれた立場を少し皮肉っぽく表現して見せたつもりだった。

「Ha ha, that’s good.(はは、それはいいね。)」

彼の表情は穏やかながらも、明らかにはてなマークがいくつも浮かんでいた。総合職や終身雇用、MBA社費派遣制度といった日本独特のビジネス文化に対して、アメリカ人の彼がどこまで知っているかなど考えもしなかった。はっと我に返り、とっさにこちらから問いかけた。

「君はどうなんだい?なんでまたMBAに来たんだい?」

「自分の志」が具体的にあるのか

彼は熱を込めて語ってくれた。

「僕はファイナンスでやっていきたいんだ。MBAでファイナンスに関するスキルや知識を磨いて、さらに高みを目指したいんだ。

正直さ、コアにしているファインス関連の授業以外の成績がAだろうが、Bだろうがそんなのはどうでもいいと思っているんだ。勿論、どの授業にも真剣に取り組むし、プロジェクトには自分の全力をかけて臨もうと思う。そこから学ぶことも多いだろうし、同じクラスメートの足を引っ張ろうとは思わない。

だけど、総じて優秀な成績を収めることは僕がMBAに居る理由じゃない。いろんな人とコネクションを作って、いい仕事を見つけて、自分が志したファイナンスの分野で一流になりたい。それが僕がここにいる理由なんだ」

彼は昨年結婚したばかりの26歳の青年だ。自分と比べて5年以上も若い。しかしながら感じるこの成熟度の差は何だろう。彼には志すものが確かにある。そして、私にはない。漠然と優秀な成績をとるために今このプロジェクトを頑張っている。間違ってはいないはずだ。だが、目の前に座る彼との間に感じる圧倒的な距離感は何だろうか。

「いや、すごいね。」

そう返すのが精いっぱいだった。自分の志について誤解されてるんじゃないかと恐れる気持ちがあったのは確かだ。成績の話とか、日本では大規模な企業には社費で社員を派遣する制度が多くあり、MBA留学の多くはそういう社員であるとか、その後も取ってつけたような話をしたような気もする。だが、正直、以降の会話の記憶があまりない。

それよりも、その瞬間に私の心中を占拠していたのは、ふとこぼれ出た自分の“本音”と向き合う中で、“俺は一体、何に向かって頑張ってたんだろう“という、自分のキャリアに対して湧き出た疑問であり、欺瞞であり、また違和感であった。一刻も早くその場を立ち去りたかった。