写真提供(一部):TENGA
# 百貨店

女性の性の悩みを救う「iroha」が百貨店でバカ売れした深いワケ

偏見の目をくつがえした「安心感」

ごくたまに、だが過去数回、飲み会でお酒が深くなると、女性の私に男性は次のようなことを聞いてくることがあった。

「女性もオナニーするんでしょう?」

女性だけの集まりで自分の性について口を軽く開いても、マスターベーションには触れてはいけない、マナーとして避けられる。そんなタブーともいえる話題に昼間から公然とふれ、女性の心地よい性へアプローチする試みが今年の8月大阪で催された。

世界中の人々の性生活を豊かにし、人を幸せにするというミッションを掲げる株式会社TENGA

同社が立ち上げた、女性視点による女性のためのプレジャーアイテムブランド「iroha」の期間限定店が、8月22日から9月4日までの2週間、大丸梅田店の5階婦人服フロアでオープンした。「iroha」の商品は普段、女性が買いづらい場所でしか実店舗では展開できていなかった。その商品を、老舗百貨店で展開するのは前例のない挑戦といえる。

「シンクタンクが発表しているデータを見ても、そもそも調査ができておらず、暗黙知なところが大きいのがアダルトグッズ市場。これから挑戦することすべてが日本の市場、いや史上初となるのです」

と語るTENGA広報・西野芙美さん。この歴史的な2週間についてお話を伺った。

取材・文/小林有希 撮影/山上徳幸

朝のテレビ番組で取り上げられるほどの大反響

「iroha POP UP STORE」は、大丸梅田店の男性スタッフ二人による「1組でも多くの夫婦が愛を深め、夫婦がこれまでもこれからもお互いを想い、幸せに過ごしてほしい」という想いを込めた企画発案だった。

夫婦には、思いやりがあるから会話が生まれ、会話があるからスキンシップが生まれる。逆に、スキンシップがあるから思いやりができ、思うやりがあるから会話が生まれるというサイクルがある。

今までの百貨店にはムードを高める商品はあるが、スキンシップに対してダイレクトにアプローチできる商品がなかったので夫婦の愛を深めるためのコンテンツのひとつとして「iroha」を販売することに取り組んだ。

 

通常出店に向けて準備期間を約1か月半設けるところ、当企画には4か月も費やすこととなった。懸念通り、次々と現れるネガティブな意見を払拭していった先に手に入れたのは、経営陣直々の「堂々とやりなさい」の一言。期間も通常1週間のところ、倍の2週間に延長することが企画時点で決定した。

期間限定とはいえ、irohaの冠を掲げた出店は初。店舗設計において「塩梅が難しかった」と西野さんは話す。

「男性のマスターベーションは笑いに変えて話す土壌があるので受け入れられやすいのですが、女性の場合はあからさますぎても隠しすぎてもいけません。

店舗外観では、irohaにある“和モダン”のコンセプトをベースに、壁は細木を細かく縦に並べて暖簾をたらすことで、店内に人の気配を感じつつも顔は見えないという絶妙な隠し加減と空気感を実現できました。大丸さんも、入りやすいようにと、あえてヤングアダルトという若年層のフロアを選ばれたそうです」

開店に向けての不安は多い。扱うものの多くはいわゆる大人の玩具で、発信する情報ひとつひとつに受け取り側の反応を想像しなければいけない。

「私たちも実際に開店してみないとわからないことが多くて……一つ間違えると“なんて破廉恥なものを百貨店で売っているんだ”ってクレーム案件になりかねません。電動のプレジャーアイテムも商品展開していましたが、念のために、大丸で配布する冊子やチラシにはデリケートゾーン用ソープしか掲載していません」

しかしオープンしてみると、予想以上の反響に。関西ローカルで放映中の読売テレビ系列の朝番組では、店舗の様子、お客様の声、広報の声などを紹介。また朝日新聞など大手新聞社にも取り上げられ、WEBからラジオ番組までショップの存在が広く認知されるようになっていった。

「まさか夜のアイテムが、朝の番組に露出させてもらえるとは思っていなかったのですが(笑)意外とみなさんに優しく受け止めて頂けて、お店にも多くの方が来店されました。肌感覚ですが、好意的な声が多かったように思えます」

“和モダン”の店舗に多くのお客様が訪れた

百貨店だからこそ得られる「安心感」

目標売上金額100万に対して、総売上は約390万と3.9倍の結果に。2週間と期間が長いものの、大丸梅田店の5階で展開してきたポップアップショップ売上の歴代一位に輝いた。

平均単価は5000円以上と、ブランド内で最も売れている「iroha stick」1296円(以下すべて税込)のほか、和菓子のような見た目の「YUKIDARUMA」7344円、「みなもづき」1万692円などの高価格帯商品が売れていたことがわかり、西野さんは驚いたという。

「当初はデリケートゾーン用ソープが売上の大半を占めるだろうと予想していましたが、蓋を開けてみるとソープが売上の25%、トイが75%を占めていました。

来店いただいたお客様約1500人の内、8割が女性、1割がカップル、残りの1割は男性でした。irohaのターゲット層である30才付近の女性のお客様が多い中、20代のお嬢さんが50代のお母さまと一緒に来店されていたこともありました」