単位はどう変わる? もうすぐやってくる国際単位系の大改定 

「kg」「秒」はこうやって決める
ブルーバックス編集部 プロフィール

これから単位はどうなるのか?

今回の改定では7つの基本単位のうち、4つの単位が新しく生まれ変ります。それでは残りの3つの単位はどうなるのでしょうか?

トークセッションの後半は、今後10年以内にさらなる改定が予想される「時間」の単位について、産業技術総合研究所計量標準総合センター時間標準研究グループ長の安田正美先生のお話です。

時間は基本となる7つの単位のうちのひとつですが、他の単位に比べて桁違いに高い精度で測られているという特徴があります。たとえば質量の場合は天秤の精度に限っても100億分の1程度ですが、時計は18桁の精度、つまり100京分の1の精度で測ることができています。

時計を測る方法は大きく分けて2つに分類されます。

ひとつは何かの崩壊を利用するものです。たとえば砂時計は、容器の上に入っている砂が「なくなる」ということを利用して時間を計ります。線香が燃え尽きるまでの長さを利用して時間を測るのも同じ原理です。

あるいは、腹時計も同じ原理と言えます。朝食べたものが、お腹の中で消化されるまでの時間を利用しているのです。

これらの時計は「一定のものがなくなるのにかかる時間は一定である」ということに基づいています。

もうひとつの方法は、周期現象を利用するものです。日時計、振り子、脈拍などがこれにあたります。この種類の時計は「一定時間を経過すると元に戻るもの」を利用しています。

時間の基準はもともと太陽の見かけの動きを基にして測られていました。太陽が真上に登ってから、次に真上に位置するまでを1日として、それを24分割すると1時間になります。

時計の歴史をたどってみると、紀元前1600年ごろにエジプトで水時計が登場し、ガラス細工が作れるようになった11世紀以降になると砂時計が広まります。さらに12世紀に入ると、機械式時計が発明されました。

20世紀になると、水晶の振動を利用したクオーツ時計が誕生しました。そして、1955年には、現在の時間の単位の基準となるセシウム原子時計が開発されました。

イギリス国立物理学研究所で開発された世界初のセシウム原子時計イギリス国立物理学研究所で開発された世界初のセシウム原子時計 Photo by Getty Images

振り子が触れる回数をカウントすると時間が測れるように、振動の数(周波数)を数えることでも時間が測れます。このとき、振動速度が速く周波数が細かい物ほど、時間を正確に測れることになります。

たとえば、クオーツ時計の振動数は1秒間に約3万回(32,768回)ですが、セシウム原子時計では1秒間に約92億回(9,192,631,770回)の振動が利用されています。これが、高精度の理由なのです。

2001年、東京大学の香取秀俊教授が提案した光格子時計は、光領域の振動を利用した原子時計です。産総研のイッテルビウム光格子時計の周波数は、セシウム原子時計よりも桁違いに高い、約518兆回(518,295,836,590,863.1回)というものです。この時計は、宇宙の年齢と同じ138億年に1秒ズレるかズレないかという精度を実現しています。

光格子時計は、一般相対性理論による時間の遅れを検証できるレベルなので、東京スカイツリーの展望台と地上で時間の進み方の違いを計測する実験にも使われようとしています。

産総研のイッテルビウム光格子時計は、2012年国際度量衡局で開催された「メートル条約関連会議」で、あたらしい秒の定義の「候補」に採択されました。同様に新たな秒の定義の候補に挙がっている時計は世界で9種類あり、10年以内には再定義されると考えられています。

もちろん、他の単位についても同じように、より高精度で安定的なものを目指した挑戦が続けられています。これから先も、単位の進化は続いていくのです。

単位は変化する