単位はどう変わる? もうすぐやってくる国際単位系の大改定 

「kg」「秒」はこうやって決める
ブルーバックス編集部 プロフィール

「キログラム」はどう変わるのか?

まず、質量を測る基本的な原理は「天秤」です。天秤は、左右の皿に載せたものの重さを比べることによって同じ質量をつくりだすことができます。

現在の最高精度の天秤は、100億分の1の質量の差を検出できます。これは、地球の人口をすべて載せた天秤から、平均的な体重の1人が乗ったり降りたりしてもその違いがわかる、というレベルのものです。

「天秤」は非常に精度の高い装置ですが、その宿命として、絶対的な質量を計測するのではなく、相対的に重いか軽いかを調べることしかできません。

つまり、比較対象となる「キログラム原器」が損なわれてしまうと、二度とその重さを再現することができないのです。

実際、130年前に作られた1キログラムの定義である「国際キログラム原器」と、同じ時期に作られたそのコピーを比較すると、わずかですが重さに差が出てしまっています。

製造から長い時を経て国際キログラム原器が軽くなってしまったのか、ほかのコピーが重くなっているのか、あるいはその両方なのか、それは誰にもわかりません。

国際キログラム原器(K)とそのコピーの質量の比較国際キログラム原器(K)とそのコピーの質量の比較

しかし、このような不安定性があると、私たちは安心してものの量を測ることができなくなってしまいます。そのような不安を払拭するため、原器に依らない基準が求められるようになったのです。

今回の定義改定を簡単に言えば、
・重さのわかっている原子をたくさん集めて、1キログラムをつくる
・そこに含まれている原子の数を数える
・数えた値を使って「1キログラムは原子○○個分の重さ」と定義する

ということになります。

原子の数を正確に数えるために作られた1キログラムのシリコンの球のレプリカ原子の数を正確に数えるために作られた1キログラムのシリコンの球のレプリカ

より正確な定義としては、
「キログラムはプランク定数の値を正確に6.62607015×10-34ジュール・秒と定めることによって設定される」
と表現されます。

「プランク定数」は量子力学で登場するエネルギーの最小単位に関係する物理定数です。このプランク定数が、エネルギーと質量を結びつける「E=mc2」の式を通して質量へと換算できるのです。

定義がわかりにくい表現になってしまったことは今回の改定の難点ですが、詳しい説明については『新しい1キログラムの測り方』をお読みいただければと思います。

先に説明した「原子○○個分の重さ」という説明と、「プランク定数の値を~~」という定義がどうつながるのかと疑問に思うかもしれませんが、実はこの二つの表現は理論式によって正確に変換することができるのです。

このように、キログラムの定義が複数の方法で表現できるようになった、ということも今回の改定の重要な結果です。

なお、今回の定義改定では「質量:キログラム(kg)」のほか、「電流:アンペア(A)」「温度:ケルビン(K)」「物質量:モル(mol)」の3つの単位の定義も変更されることになっています。

新しい1キログラムの測り方