まずは、産業技術総合研究所計量標準総合センター長の臼田孝さんから、単位の起源と新しい「キログラム」の定義についてお話しいただきました。臼田さんは世界に18人しかいない国際度量衡委員の一人です。
みなさんは、今日何を測りましたか?
健康のために体温を計った。料理に使う砂糖や塩の重さを量った。というように、私たちは日々いろいろなものを計測しています。
こうしたものを測ったとき、それを他の人に伝えたり、基準となる値と比べたりできるのは、じつは「単位」があるからです。
たとえば、体温計の「36.5」という数字、砂糖を載せたはかりの「20」という数字だけでは、なんのことかわかりません。「36.5℃」や「20グラム」というように、数値と単位が合わさって初めて、その量を共有することができるのです。
現在、世界的に使われている国際単位系という体系は、「長さ:メートル(m)」「質量:キログラム(kg)」「時間:秒(s)」「電流:アンペア(A)」「温度:ケルビン(K)」「光度:カンデラ(cd)」「物質量:モル(mol)」という7つの単位が基本となっています。
私たちが使っているさまざまな単位は、原則としてこの基本7単位の組み合わせですべて表現することができるのです。
このような国際的な決まりが生まれたのは、ちょうどフランス革命の頃でした。
最初に決められたのは長さの基準となる「メートル」です。このとき、パリ科学学士院は「北極から赤道までの子午線の長さの1000万分の1」を1メートルの基準とすることにしました。
地球の大きさを測るということは当時は非常に困難なことで、測量には6年もの年月がかかりました。途中で測量隊が拘禁されるなどの憂き目にも遭ったそうです。革命という政治的な混乱のなかで、このような大事業を行ったということ自体が、当時のフランスが単位をいかに重要視していたかを表しているともいえます。
ちなみに、フランスでは統一的な単位を社会に普及させるために、パリ市内の12ヵ所に1メートルを表すモニュメントを作成しました。現在でもヴォージラール通りとヴァンドーム広場に、その実物が残っています。
長さの基準が決まれば、それを基にして重さの単位も決められます。具体的には10センチメートル立方の水の重さが1キログラムの基準となりました。
ただし、蒸発や、温度によって体積が変わってしまう水を正確に量ることは困難だったため、同じ重さの分銅(確定キログラム原器)を作り、それを1キログラムの定義としました。
その後、科学が発展し、計測技術が進むにつれて、より精度の高い基準が必要となるたびに、この定義は改定されつづけていました。そのようにして完成したのが、冒頭に挙げた7つの基本単位の定義なのです。
そしていま、キログラムを含む4つの単位の定義が変わろうとしています。