世界遺産になる前に「奄美・沖縄」について日本人が知るべきこと

その自然の素晴らしさは、まさに異次元
青山 潤三 プロフィール

沖縄が世界的にも稀な理由

前回の記事で、筆者は沖縄の特殊性について、その源泉は気候や環境ではなく、遥か過去に遡る地史的要因によるものである、と記しました。

その際、読者からいただいたコメントの多くは「そのような論法に基づけば、北海道をはじめ日本中(あるいは世界中)どこでも独立国だらけになってしまうではないか」というものでした。

ある意味ではその通りです。沖縄だけでなく、例えば北海道も小笠原も、対馬も屋久島も西表島も、本州と比べれば、みなそれぞれに独特です。もちろん本州各地にも個性があります。日本はきわめて南北に長い国ですから、場所に応じて気候も植生環境も変化し、その上に成り立つ文化も異なってくるのは当然です。

しかし沖縄、特に中琉球の特殊さは、日本の他の地域の生物相とは、特殊さの次元が異なります。中核にあるのは、進化(正確に言えば特殊化、日本におけるその極は小笠原の固有種)とは対極の、「進化に取り残された生物」たちの存在です。

たかだか数万年の人類の歴史と、数百万年から数千万年単位の地域の成立史、そこに育まれた固有生物の歴史は、全く位相が異なります。地域の固有生物の姉妹種(sister species)の多くが、世界のどこにも見当たらない……そのような場所は、日本はもちろん、世界中を見渡しても極めて稀有です。

その一方で筆者は、多くの研究者が信じているであろう「生物地理学的にみて、沖縄が地球上で他に類を見ない特殊な空間であるが、あえて関連する地域を示すとすれば、日本本土よりも台湾や中国大陸である」という「定説」にも反論を試みたいと考えています。「生物地理的に見ても、沖縄(中琉球)と最も関連が深いのは、実は日本本土なのである」という見方です。

 

島々の位置関係を押さえる

そのためには、まず沖縄(中琉球)の生物相が、いかに特殊かを具体的に説明しなければなりませんが、その前に、沖縄本島の位置関係などのおさらいをしておきましょう。

九州と台湾(これら両島の面積はほぼ同じで、沖縄本島の約30倍)、鹿児島市と台北市のちょうど中間地点に位置するのが、沖縄本島(沖縄島、おきなわじま)です。

その一つ北の島は、鹿児島県の与論島。最短直線距離にして22km、沖縄北部の山からは島影が望めます(天候次第ではさらに先の沖永良部島や徳之島も遠望可能)。

一方、沖縄本島からみて一つ南の島は、同じ沖縄県に属する宮古島。こちらは直線距離で290km離れていて、高い山も存在しないことから、肉眼で見るのはまず不可能でしょう。また、両島の間には深さ1000mを超える海溝も切れ落ちています。

東方350kmほどの太平洋上には、大東諸島の3つの島。そして西方400kmほどの中国大陸棚上には、尖閣諸島の島々。

西方に迫る大陸棚(沖縄本島からの距離は150~200kmほど)と琉球弧の間には、北は九州西方から南は台湾東北方に至る琉球トラフ(最深部2000mを超す海盆)が、1000kmあまりにわたって横たわっています。

琉球(沖縄)トラフ(CC BY-SA 3.0)

琉球トラフを挟んだ南北の端に位置する、長崎県の男女群島と沖縄県の尖閣諸島は、「中国大陸棚上にある日本の国土」ということになります(こう書くと「国益を損なうような情報を流すな」という批判も飛んできそうですが、自信をもって自国の領土を主張するためには、有利不利にかかわらず、まずはその位置関係を全国民がきちんと把握しておくべきだと筆者は思います)。