女子東大院生が、現代新書編集部を直撃して驚いたこと①

オビは、口ほどにものを言う
現代新書編集部 プロフィール

タイトルは目、オビは鼻と口

ナナ なるほど!(う〜ん、本の世界も「見た目」か。シビアだなぁ、人間の世界と同じ……) 新書の表紙には、それ自体にもタイトルや著者名などの情報もありますよね。その本の表紙におけるオビの位置付けを、どう捉えればいいのでしょうか?

ヨネ たとえば、本のタイトルと著者は人の目、オビは鼻や口、カバーソデ部分の著者プロフィールや目次は人の耳のようなものだと考えてみよう。

ナナ えっ! タイトルが目、オビが鼻と口カバーソデが耳ですかっ? 

ナナ画伯、渾身のイメージ図

ヨネ そう。考えてみると、初対面の人と会うときには、だいたい最初に目を見るじゃない? そして、この人はなんだか純粋な目をしているなとか、悪いこと考えてそうな目だな、とか何となくわかるでしょう?

ナナ はい。私、目が輝いている人を見ると、何だか吸い込まれそうになります!

ヨネ 目を見た後は、話しぶりによって、その人となりを推測する。そしてその後で、鼻や耳の形なんかを見る。

それとまったく同じで、新書の場合も、人はまず、タイトルや著者としての目を最初に見る。面白そうな、なんだか深そうな含みを持ったタイトルだなぁ、と思う。じゃあ、この目、このタイトルは、一体何を私に訴えてくるのだろう?

そう思って目の下を見てみるとオビがあって、その本が伝えたいことや訴えていることのキーワードが書いてある。著者ないし本の主張が、端的にオビの文言にあらわれている。目は口ほどにものをいうというけれど、オビは口ほどにものを語るんだ。

ナナ なるほど! オビはその内容を語る、ということですね! 

ヨネ そう。その本を買ってもらうためには、タイトルとしての目と、オビとしての口(話し文句)で、「この本は自分にぜったい必要なものだ!」、と確信してもらわないといけない

編集者の手腕が、ここで問われる。もちろん、耳に当たるカバー裏に書かれた著者プロフィールも、髪型に当たるようなオビ裏の文言も大事だけれど、やっぱり目と口が最重要だと思うんだ。

ショッキングな事実を示して6万部突破

ナナ 現代新書の場合、オビの文言が上段と下段に分かれている場合も多いから、その上段が鼻、下段が口と捉えればよいんですね! 

なんだか、現代新書1冊が生身の人間のような感じがしてきました。

ヨネ そこで! いくら心の綺麗な人間であっても、いくら中身が純粋な人間であっても、それが顔とか話しぶりに現れないと、なかなか「あなたが好きです!」とは言ってもらえないでしょう?

ナナ は……はい。

ヨネ 同じように、いくら中身の良い本であっても、見た目にそれがあらわれなければ誰からも興味を持たれないし、なかなか買ってもらえない。

人間の顔は、その人がいかに自分を見せるかという自己表現の場。タイトルとオビは、本にとっての最大の自己表現の場なんだよ。ただし、本は寡黙だから、担当する編集者が、本の気持ちをうまく代弁して、顔をつくらなくちゃいけない。

ナナ 本の中身を表現するものですか。オビの位置付け、だんだんわかってきました。

そういえば、私がこれまで書いてきた大学のレポートや論文も、「目」としてのタイトルが堅苦しすぎて(「〇〇に見られる△×の役割に関する一考察」「○世紀××における〜をめぐる△○観」etc...)、もし本屋さんにあっても、誰の目にも止まらないかも……。

売るために、興味をもってもらうために、「魅せ方」を工夫しないといけないんですね。

ヨネ 一般的なビジネスと同じく、包装とかネーミングを工夫しないと、商品は売れない。良いものをつくっているだけではビジネスにはならない。「これは良いものだ!」と声高に、上手に宣伝することでビジネスは成り立つ。

ナナ それでは、実際のオビのつくりかたについてお聞きしたいです! 1冊の新書をつくるときには、どのようなプロセスで、オビを決めていくのですか?

ヨネ まず、担当編集者が自分のつくりあげた、愛くるしい1冊について、「ここを強調したら買ってもらえる!」、つまり、読者から「好き!」と言ってもらえる惹き文句とか、その本の面白さをキャッチーにあらわすような文言を、数パターン考える。

今月発売の4点オビカバーデザイン案

目としてのタイトル文言と、口としてのオビ文はほぼ同時に決まることもある。「タイトルはこの文言、オビ文はこっちの文言にしたほうが、より読者に響くよね」と、編集長と何度も話し合う。そしてようやく決まったタイトルやオビコピーを、デザイナー(装幀家)に持って行く。

オビには文章だけじゃなくて、時に写真やイラストも入るから、どう組み合わせるかをデザイナーに伝える。すると、1週間を目安に、大まかなデザイン案が仕上がってくるので、そこからレイアウトを何度か修正してもらって、最終的に決定する。