オビを真剣に見つめるナナ(右)

女子東大院生が、現代新書編集部を直撃して驚いたこと①

オビは、口ほどにものを言う

「やだ、まだ働きたくない!」

今から2年前、こう言って就活を先延ばしにし、東大院生活を送る私、通称ナナ。“就活”シーズン到来におびえているとき、ひょんなことから、現代新書編集部に少しだけ出入りすることになった。

振り返れば、講談社現代新書は私が人生で初めて読んだ新書シリーズだ。中学生のとき、鈴木晶さんの『グリム童話』で妖しいメルヘンの世界に夢中になったり、大学生の頃には橋爪大三郎さんの『はじめての構造主義』で「現代思想」デビューをしてみたりと、思い出深い作品が多い。

でもこれまで、新書を「つくる」側の立場なんて、考えたこともなかった。

現代新書はこの1年、大ヒット続きで社内外の注目を集めているという。去年下半期から見ても、『未来の年表』54万部、『未来の年表2』20万部、『知ってはいけない』11万部、『不死身の特攻兵』22万部、『昭和の怪物 七つの謎』16万部……

5万部売れればヒット本と言われる新書界で、こんなに売れてるのはなぜだろう? 編集部の雰囲気もなんだかとても和やかだ。のほほんとした平和そうな人たちがなぜ?――ええい、わからなければいっそ、体当たりで探ってしまえ!

……最初に話しかけてくれた編集者は、かの『未来の年表』シリーズを担当したという、なんだか全体的にモッサリした、シロクマみたいな人だった。

ナナの席の正面にはコロンちゃんが佇む

オビはそもそも不要なもの

ヨネ ようこそ、講談社現代新書の編集部へ。毎月4冊ペースで刊行しているのに、編集者はいま7人しかいない。意外とこぢんまりしたところでしょう? 

ところで、ナナさんは書店でふらっと新書コーナーに行くと、まず何を見る?

ナナ (い、いきなりの問いかけ……これは面接⁉)え、えっと……まずは、新刊や話題書が平積みにされている台を見ます! そして、なんか面白そうな本だなと思ったら、実際に手に取って本の裏側のオビ文も読んで、著者プロフィールなんかを見て、パラパラ目次までめくってみます。

ヨネ そうだよね。僕もそう。そこで! 面白そうだと思うのはまず、本の表紙を見るからだよね? アマゾンとかネット書店にしても、まずは表紙画像を見る。

ナナ たしかにそうですね。まずは表紙の、タイトルと著者。そして……オビ文

ヨネ オビ!……でもさ、これってよく考えてみると、本を読むにはいっさい不要なものだよね。捨てる人もたくさんいるし、海外の本の大半にはついてないものだし。

ナナ そういえば……。私は折りたたんで、本の中にとじ込んでしおりにしたり、ときどきいつの間にか破れて、捨てたりしているけれど……正直、これまで、オビについてあまりよく考えたことはありませんでした。

オビってやっぱり、本にとって大切なものなのですか?

ヨネ もちろん! 新書のオビには深い意味がある。僕が愛してやまない編集長がつねづね言っていることを僕なりに解釈すると、本のカバーとオビは、人の顔面を構成しているんだ。

福満しげゆき氏に書いて頂いたイラストオビ

いかに本を「メイク」するか

ナナ が、顔面を……どういうことですか?

ヨネ 「人は見た目が9割」ではないけど、誰かの顔を見ると、人は瞬時に「この人はこういう人なんだ」ってまずは判断してしまう。それは仕方ない。だから、メイクをどうしようとか、ヒゲや眉毛のつくりをどうしようとか……人と会う時は外見をカチッと固めようとするでしょう?

ナナ はい。わたしも、メイクがばっちり決まった日は、テンションが上がったりします。自分に自信がつくというか(最近は論文に追われているから、だいたいテキトーだけど……)。

ヨネ それは本についても同じこと。読者は書店(ネット書店)で表紙(画像)を見て、短時間でそれを読んで、この本には何が書いてあるのか? どういう内容なのか? を判断する。

そして、実際に手に取るかどうかを決める。だからつくり手としては、その「顔」、「本の頭部」をいかにうまくメイクしていくかを考えなくちゃいけない。

ナナ そこで重要な役割を果たすのが、オビというわけですね。

ヨネ 売れない本、もっと言うと「売れない頭部」ばかりつくる編集者は、やがてそのクビを切られる。タイトルとオビでいかにイケメン(or美女)をつくれるかが、その売れゆきを大きく左右するから、そこに最大限の力を込めなくてはならない。