「女性活躍」に足をすくわれる男たちの悲劇〜これは逆差別なのか

これを解決しなければ、成功はない
奥田 祥子 プロフィール

「女性管理職を増やす」数値目標が一人歩き

佐藤さんのようなケースが出てくる背景を理解するためには、これまでの「女性活躍」の経緯を押さえておく必要がある。

職場における男女差を積極的に解消する「ポジティブ・アクション」。こうした動きに対する企業の意識の高まりは、2016年の女性活躍推進法の施行を契機に一気に加速した。

同法で従業員301人以上の企業などに義務づけられた行動計画には、女性の採用比率や勤続年数など複数の項目があるが、メディア報道などを介して情報が社会に浸透していく過程で、「女性活躍」イコール、女性管理職を、数値目標を設けて増やすこと、とミスリードされていった側面がある。

このため企業などは、取り組むべきさまざまな「ポジティブ・アクション」の中でも、女性の管理職登用こそが最も重要で、かつ真っ先に取り組むべき「女性活躍」施策であると捉え、当の女性社員たちが望む働き方や職場でのポジションを度外視し、数値目標達成ありきで、「数合わせ」の女性登用を進めようとしているケースが少なくない。

一方でそうした企業が、女性社員が管理職に就くために必要な能力の開発や、経験不足に対する対応や、家庭との両立で障壁となる長時間労働の改善といった、本質的な対策は不十分だという例も散見される。

形だけを整えようとして、実質が伴っていないということだ。

こうした女性登用の進め方に対して、さまざまな葛藤を抱えて思い悩んだ末に、管理職就任を拒絶する女性が増えていることは、以前の記事(「出世を諦めた女性」は‟悪”なのか~女性登用が生む根深いジレンマ)でも述べた。

 

こうした混乱は、如実に数字に現れている。国の最新データ(厚生労働省の2017年度雇用均等基本調査)では、女性の課長相当職以上の比率は前年度より0.6ポイント減少して11.5%にとどまり、2020年までに「少なくとも30%程度」に増やすとする政府目標との間には大きな隔たりがある。政府の旗振りは目立つが、実際の「女性活躍」は、まだまだ進んでいるとは言い難い。

繰り返しになるが、こうした「掛け声」と「実態」のズレは様々な弊害を生んでおり、そのシワ寄せは男性にも及んでいることをよくよく認識しておくべきだ。女性を管理職へと押し上げる推進役の任務を課せられた男性幹部社員たちも、思いのほか苦しみ、「女性活躍」施策に翻弄されていることを、私は多数の男性社員へのインタビューを通して痛感してきた。

男性上司も、管理職候補の女性部下を育成した経験に乏しい。このため、的確に職務を割り当てながら、管理職に必要な能力やスキルを伸ばしたうえで、昇進させてさらに力を発揮させていくという、本来あるべき人材育成と昇進のプロセスを具現化できていないケースが多いのではないだろうか。

女性を「引き上げる」管理職の仕事は様々な点で難しいのである。晩婚化の進展により、管理職候補となる時期に、まだ幼い子どもを抱えた女性社員は増えている。男性管理職は、そうした女性社員について、労働負担を軽減する両立支援という配慮をしなければならない。しかしそれと同時に、責任の重い立場への積極登用という、ベクトルの異なる仕事を行わなければならない。

〔PHOTO〕iStock

こうした方針に矛盾を感じつつも、抗えない管理職男性たちも少なくない。その苦悩や悲哀は大きいだろう。

そうした困難な仕事の果てに、佐藤さんの事例のように、候補の女性部下が管理職昇進を断るという、男性上司にとってゆゆしき事態が起こる可能性もある。男性にとっては、推進役としての任務の未達成で人事評価を下げかねない、つまり自身のキャリアにとって危険因子ともなっているのである。