1gで5億円超の物質を量産!? がん治療薬も導く「糖鎖工学」とは

世界唯一の技術を実現した創業者を直撃
リケラボ プロフィール

実験用に市販されている試薬で1mg(=0.001g)が5000ドルぐらいですので、1gならざっと5億円を超えます。これでは研究に使うのも難しい。

ところが我々は年間10kgぐらいを作れる体制を整えました。価格は公表できませんが、従来と比べれば驚くほど安価です。

糖鎖工学研究所ではこうした純度99%以上の糖鎖ライブラリーを用意しています。そして糖鎖をタンパク質のどこにでも組み込める技術も開発済みです。

これは生物学的な方法ではなく、純然たる有機合成つまり低分子薬を作るのと同じ方法論に基づいた手法です。

糖鎖工学研究所が持つ糖鎖ライブラリー糖鎖工学研究所が持つ糖鎖ライブラリー。これを活用して必要な糖鎖構造をつくり出す

いよいよ創薬へ、臨床研究も

──創薬への利用が期待されますね。

ようやくそのレベルにまでたどり着きました。

平成26年度から、株式会社日本触媒と糖鎖修飾ソマトスタチンアナログに関する共同研究と共同臨床開発を進めています。これはヒトの生体内にあるソマトスタチン(成長ホルモンの分泌抑制作用を持つホルモン)にヒト型糖鎖を付加させた、新しいソマトスタチン誘導体です。

これにより腫瘍から分泌される過剰なホルモンの働きを抑え、ホルモンによる異常な症状を改善し、腫瘍を小さくする効果が期待されています。

我々が持つ自由に、しかも安価に使える糖鎖の存在が、少しずつ知られるようになってきました。共同研究が進みヒトでの安全性が確認されれば、一気に事業が拡大すると期待しています。

──創薬に活用できれば、事業が急成長する?

生理活性ペプチドは、すでに数多く見つかっていますが、未だに実用化されていません。

その理由は、半減期が短いために体内ですぐに分解されることと、水に溶けにくいためです。水に溶けないと注射薬として利用できません。

ここに糖鎖を付加すると、ペプチドの活性を長く保つと同時に、ペプチドを水溶性に変えられるのです。しかも、設計図通りの糖鎖を作れるため試行錯誤する必要がなく、新薬の開発期間を大幅に短縮できます。

──今後の見通しについて、どのようにお考えなのでしょうか。

日本触媒社のほかにも数社と受託研究が進んでいます。なかには特定のがんを対象に独自に研究を進めている素材もあります。臨床研究まで進んでいる素材もあり、いずれ開発へと進んでいくはずです。

新薬が上市されれば、材料を手がける我々の売上が一気に増えます。受託研究が増えれば、毎年1~2件程度が開発まで進むはずで、中長期的には売上が右肩上がりとなると見込んでいます。

何しろ糖鎖を製造し、タンパク質に自由に付加する技術を持っているのは、今のところ我々だけですから。

ラボには糖鎖の魅力にひかれて、海外から来た研究者もいる