1gで5億円超の物質を量産!? がん治療薬も導く「糖鎖工学」とは

世界唯一の技術を実現した創業者を直撃
リケラボ プロフィール

さまざまな疾患に糖鎖がかかわっているため、画期的な新薬開発の可能性は、広く知られています。

ところが、とても残念なことに糖鎖を活用した薬は、今のところほとんどありません。

なぜなら糖鎖の構造があまりにも多様で複雑なために、極めて扱いにくいからです。その結果、高純度の糖鎖は、通常は大量生産できないのです。

──糖鎖を人工的に作ることはできない?

タンパク質は今の遺伝子工学を使えば、ほぼ100%思い通りに製造できます。

ところが、糖鎖については、200種類の酵素をはじめとしていろいろな物質がかかわってくるため、試験管内でシンプルに作ることができません。

こうした状況を踏まえて、2007年のNature誌に『The same but deifferent』と題した記事が掲載されました。

記事が取り上げているのはバイオ医薬品のジェネリックについてです。バイオ医薬品を構成するタンパク質は人工的に合成できても、薬効を出すために付ける糖鎖を思い通りの位置に付加するのは極めて難しいのです。

だから、バイオ医薬品のジェネリックは、先発品と完全に同一の構造のものを作ることはできません。

「似ているけれど、本質的には違う」というのが、記事の意味であり、そのためバイオ薬品のジェネリックは、厳密には「バイオシミラー」と呼ばれています。

高価な実験機器が並ぶラボの内部高価な実験機器が並ぶラボの内部

糖鎖の大量生産に世界で唯一成功

──とはいえ、御社では、糖鎖を人工的に作っているのですよね。

その通りです。我々は、糖鎖工学を用いて高純度の糖鎖を大量生産する革新的な技術開発に成功しました。

思い通りの糖鎖を作ることができるため、バイオ医薬品の創薬に貢献できます。

糖鎖を大量に作るといっても、その量はせいぜいキログラム単位です。なぜなら、糖鎖はごくわずかな量で効力を発揮するからです。

糖鎖を活用した医薬品の数少ない成功例として、Amgen社が開発した腎臓透析用「アラネスプ」があります。ヒトの糖タンパク質であるエリスロポエチンのアミノ酸配列の一部を改変し、活性に重要な役割を果たす糖鎖を付加した遺伝子組み換え糖タンパク質製剤です。

この薬は、1回あたり15~60μg(0.000015~0.00006g)を静脈投与します。だから年間生産量がわずかに170gであるにもかかわらず、売上は4500億円にもなるのです。

糖鎖から糖ペプチド、さらに糖タンパクまで思い通りに作ることができる糖鎖工学糖鎖から糖ペプチド、さらに糖タンパクまで思い通りに作ることができる糖鎖工学

──糖鎖は、とてつもなく高額なのですか。