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「丸の内のたそがれ」から大改革!三菱地所会長の経営哲学

大塚英樹の「成功するトップ」⑥
大塚英樹

長いスパンで続けていく文化の継承

「われわれの基本使命は街づくりを通じて社会に貢献することです」と杉山は語る。

「不動産会社は、土地を買って開発します。土地は限られた社会資産。自分の土地だから好きなようにしていいとは考えない。ある意味、土地は国から預かっているわけですから、いい開発をしないと国土をダメにしてしまうという思いがある。もちろん、利益は大事ですが、国にとっていい開発をすれば、利益はあとでついてくるという考えで事業をやっています」  

 

ここで大事なのは、杉山はお金以外の「世のため、人のため」という自発性の企業文化を企業に埋め込もうとしていることだ。継続的社会貢献が企業の目的だが、そのためには手段として利益が必要。

「利益を上げることを通じて長期にわたり社会に貢献することを目的とする組織」という企業観を持つ。  

さらに特筆すべきは、杉山が「続く企業土壌を作ることが社長の役割」と考えていたことだ。

「歴史に残る仕事をやりたいという思いもありますが、残るからこそ次世代に繋いでいくものを造らないといけない。われわれの仕事は5年~10年の長いスパンで手掛けるもの。社長時代に計画し、完成する例はまれです。例えば、私は2年前、高さ390メートルのビルを造ると発表しましたが、完成する頃には喜寿を迎えている。この世にいるかどうかもわからない。だから、〝続けていく文化〟を作ることが大切なのです」  

開発に長期間かかるのは、前社長の木村惠司時代に決定し、杉山時代に完成した「大手町フィナンシャルシティ」の例などからもうかがえる。  

杉山が一貫して腐心し続けているのは、「人育て」だ。

専務時代、杉山は人材育成の考え方を、①長期的な観点での人材育成を重んじる、②仕事を通じた人材育成が一番大事──などと語っている。

すなわち、「OJTで、時間をかけて育てること」を基本とする。  

面白いのは、杉山が、「自社らしい人材育成に、愚直に真剣に継続して取り組む」と断言している点だ。

つまり、杉山は人材育成策でも「自分で考え、世の中、社会のために仕事をする人間」という〝ぶれない軸〟を追求すると当時から訴えている。

長寿企業の秘訣がそこにある。

杉山博孝(すぎやま・ひろたか)
1949年、東京都生まれ。一橋大学経済学部卒業後、1974年に三菱地所入社。経理部へ配属後、宅地造成等を担当する部署を経て、人事部へ異動。企画部長、経理部長などを歴任した後、2004年、執行役員就任。2007年に常務執行役員、2010年代表取締役専務執行役員などを経て、2011年取締役社長に就任。2017年4月より取締役会長。