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「人間必需品」を社会に提供する!ヤマハ社長の経営哲学

大塚英樹の「成功するトップ」⑤
ジャーナリスト・大塚英樹氏は、長年にわたり企業経営の最前線で「企業のトップ」という存在をウォッチしてきた。その中でいま、大きな変化が起きていることを感じている。大塚氏は近著『確信と覚悟の経営 ーー社長の成功戦略を解明する』で、16人の日本を代表する企業トップに変革の時代を生き残るための「確信」と「覚悟」を聞いた。短期連載でお送りする。第5回は、ヤマハの中田卓也社長に迫る。

「感動と豊かな文化」のための確固たる理念

成長する企業の経営者は、自社のコンセプトを明快に説明できる。自社が取り組むベき事業を十分理解している範囲内に絞り込み、わからない事業は決して手掛けない。

その点、中田卓也は、ヤマハの理念は「人間必需品産業」と明快だ。  

われわれの商品は〝生活必需品〟ではない。

 

しかし、人間が人間らしく生きるために必要な商品であるという。

ヤマハの事業は、ピアノやポータブルキーボードなどの鍵盤楽器事業、サクソフォンなど管楽器事業、ギターなど弦楽器・打楽器事業、システムコンポ、会議システム、PA機器など音響機器事業、電子部品、自動車用内装部品……。

これらはすべて中田自身が現場の実態を体感し、把握できている事業ばかりである。

写真提供:ヤマハ広報

中田が現在、イノベーションに精力を注いでいるのは、「感動と豊かな文化」を人々に提供することを不動不変の理念として守り抜くためである。  

ヤマハの事業は、生活必需品ではないという強い認識から事業戦略はスタートする。

人間は楽器がなくても生きてはいける。それゆえ、楽器には生活必需にない絶対的な特徴が1つ生まれる。

生活必需品である食べ物であれば、人間は毎日必ずおなかが減るので、昨日よりおいしい食べ物でなくても、みんな必要としてくれる。  

しかし、楽器は違う。魅力的な何かがなければ、顧客には価値を認めてもらえない。そこで、新しいもの、経験したことがないものにこそ、価値があるというヤマハの戦略が生まれる。