意外! 海に舞い降りたPM2.5はプランクトンの栄養になっていた

2つのモデルを結合してわかった真実
海洋研究開発機構 プロフィール

──どのように研究を進めたのですか?

これまで個別に使われていた大気化学輸送モデルと海洋生態系モデルとを結合し、シミュレーションを行うことにしました。

──そのモデルとはどのようなものですか?

まず、今回使った大気化学領域輸送モデルは「WRF/CMAQ」といいます。

領域気象モデルで計算された気象情報のもと、PM2.5をはじめとする大気中の物質の化学反応や、物質が風の流れによってどのように運ばれ、雨などによってどのように陸や海に落ちるかをシミュレートするモデルです。

PM2.5の成分やその起源を知る上で確かな実績を誇ることが知られ、我々が過去に行った国内のPM2.5の検証に対しても良い結果が得られています。

続いて、海洋低次生態系モデル「COCO-NEMURO」は、植物プランクトンを2グループ(小型の植物プランクトンと、珪藻などの大型植物プランクトン)に、動物プランクトンを3グループ(小型の動物プランクトン、大型カイアシ類、肉食系の動物プランクトン)に区分し、食う・食われる、生き物が排出した有機物を分解する、といった海の食物連鎖を取り巻く一連の流れを考慮した数値モデルです。

この2モデル、WRF/CMAQとCOCO-NEMUROとを結合したのです。

こうして、PM2.5をはじめとした窒素化合物が大気から海に運び込まれ、海中のプロセスを経たときに、植物プランクトンが時空間的にどう変わるのか、定量的に求めることが可能になりました(図8)。

WRF/CMAQとCOCO-NEMUROを結合したイメージ図8 WRF/CMAQとCOCO-NEMUROを結合したイメージ

計算はスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」(動画)で行いました。

──結果はいかがでしたか?

下の図9で左が、PM2.5等の大気窒素化合物が海に運び込まれなかった場合(供給無し)、右が運び込まれた場合(供給有り)の、表層のクロロフィル濃度です。

クロロフィルとは植物プランクトンが持つ光合成色素で、植物プランクトン量を知る指標となります。赤いほど植物プランクトンが多く、青いほど少ないことを意味します。西部太平洋の亜熱帯海域の、白い四角で囲ったところを見てください。

左:PM2.5窒素化合物の海への供給無し 右:PM2.5窒素化合物の海への供給有り図9 左:PM2.5窒素化合物の海への供給無し 右:PM2.5窒素化合物の海への供給有り

見比べると、窒素化合物が運び込まれた方が、青が少し薄いです。

PM2.5等の窒素化合物が運び込まれた場合、西部北太平洋亜熱帯海域の植物プランクトン量は0.1mg/m3でした。運び込まれなかった場合よりも2.3倍高い値です(図10)。